【RKRN】音【綾滝】 (ページ9)

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足音　　六日前ページ9

ひた、ひた、ひた、ひた...

勿論足音(それ)はその夜も聞こえてきました。

(また夢か。うんざりするなぁ。早く覚めてほしい─────)

布団を頭まで被って、中でうずくまる。

ひた、ひた、ひた...

また、近づいてきている。

ひた、ひた、ひた、ひた...

そしてまた部屋の前で止まった。

───────ひた、ひた、ひた、ひた...

...入ってきた？

ひた、ひた...

滝の隣で止まった。体は依然として動かない。

歩いてきた化け物は、滝の首に手を伸ばす───────

僕は布団を被っていました。でも、見えたのです。はっきりと。

僕は必死に叫んだのです。滝夜叉丸、逃げて、と。

けれど届くはずもありません。

そして化け物の不気味な指先が喉元まで届き───────

そこでまた、僕は飛び起きました。

(そうだ。あれは夢だった。)

とたんに我に帰り、何を夢ごときにムキになっていたんだ、と呟きました。

でも、僕が知るのは少し後なのです。

滝夜叉丸が、今朝方大量の血液を吐き出して、保健室に運ばれた事を。

つくづく今回の件に関しては、無力であった自分を振り返りながら悔やんでいるのです。

でも、何故布団を被っていたのに見えたのでしょうか。

そしてもう一つ不思議な事があるのです。

化け物の姿はくっきりと見えていたはずなのに、

その姿を欠片も覚えていないのです。

─────────平滝夜叉丸がいなくなるまで、あと五日。