人形師【look back on the past】

死体 ページ5

もう、死体を眺めるのはやめた。

娼婦の死体には蠅がたかり、切断された首からは蛆虫が顔を覗かせていた。

ドレスも美しくなくなった。

俺は鋏を影に仕舞って、裏通りを進んで行った。

俺は宗教都市にいる。
ここに残してきたかつての店、いくつかある店の中でも唯一Aが寄った店。

そこに入れば特に酷い腐臭がした。

宗教都市。何てのはただのお飾りだ。
人々の救済云々言っているが、それが現実ならこんな風に死人が出るわけがない。

単に都市は司祭や修道女、エクソシストなどを募って悪霊悪魔どもを根絶やしにするためだけに造られたのだから。

そこに人の救済はない。

その分、がばがばの警備のおかげで人形が作れると思えば嬉しい事だが...これは保存が大変だ。

死体は腐敗する。
店に転がるこの死体みたいにどうでもいいやつらはこれで良いが、そうでないなら話は別だ。

ここの冷凍室の氷結魔力はとっくの昔に切れている。

それに一度、ここの兵が尋ねた事もあったしな。

やっぱり迷いの森の店の方が良いかもしれない。

あそこは人が尋ねない。

そうと決まれば足は勝手に動いていた。

...Aが来ることはない。
それは分かっている。

そして、俺はこの大陸から出られない。

Aにここに来てもらう他ない。



そうだな...
どうすれば来てくれるのだろうか？









いっそのこと大量虐殺でも起こしてみるか。

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