教えを乞う ページ37
炭治郎達が帰ってからずっと、その場から動けずにいた。
頭の中で、炭治郎達の言葉が忙しなくぐるぐると回っている。
"自分のために生きる"だとか、考えたこともなかった。
家族が幸せになれるように。苦しい思いをしないように。大切な人達が笑って暮らせるように。
私の中では、それが全てだったから。
だけど、そんな大切な人達は私の元から去ってしまった。私の全てが、壊れてしまった。
でもそんな中残ったのは、"姉様の大切なものを守る"ということ。"姉様のため"。そして"生きている皆のため"この命を張るのだと。
そのためだけに、私は生かされているんだと思った。そうとでも思わなければ、すぐにでも押しつぶされてしまいそうだったから。
それに私は、誰かのために生きること以外の生き方を知らない。
"誰かのために"。この気持ちが、私の原動力となっているから。昔から常に、それを意識して生きてきた。誰かのためになら、私はどこまでも頑張れるし、強くなろうとすることもできる。
それに、誰かの幸せそうな顔を見るのが、大好きだったから。だからこそ、自分をそっちのけで、他人のためにと生きてきた。
私が私らしくあるために、それは必要だった。
"自分のために"?私が私のために動いて、誰かが救われるの?幸せになれるの?とてもそうとは思えない。
……ああ、でも、炭治郎が言っていた。"姉様のためにも、これからどうするか考えてみろ"と。
姉様は、私が私のために生きれば、幸せになれるのだろうか。なんの心残りもなく、成仏できるのだろうか。
『……姉様…。』
呼びかけたところで、返事が返ってくるわけがない。閑散とした部屋に、私の声が静かにこだまする。
もう疲れてしまった。悪意ある言葉も、視線も、態度も、私に向けられるそれらの感情が、ひどく疎ましい。
"さっさと死んじまえってんだ"
ふと、不死川様に言われた言葉が脳裏を掠める。その次に、傍らにある日輪刀に目が行った。
ああ、なんだかもう、何もかもが面倒くさい。何も考えたくない。
姉様の所へ行きたい。
鞘から刀を抜き出し、それを自分の首へと当てがう。不思議と、恐怖は感じなかった。
"A"
だが、不意に名前を呼ばれた気がして、顔を上げる。気がつけば、外はもう日が沈み始めていた。
『姉様…さな姉様……私は……どうしたら…教えてよ、さな姉様……。』
まるで姉様のような優しい茜色に包まれながら、私は静かに涙をこぼした。
終わり ログインすれば
この作者の新作が読める(完全無料)
←壊れる前に
372人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アマリス(プロフ) - この夢主、魔法少女になったら真っ先に魔女化するな。で、人間体は死んで、魂ごと消えるあれですけど、まあそうなればみんな幸せなんでしょうね。夢主は魂ごと消滅するんですから。本当にそうなったら、どうなるんでしょうね。 (2022年5月22日 20時) (レス) id: 7d0074fb6d (このIDを非表示/違反報告)
ふじか(プロフ) - 更新楽しみに待っています! (2021年9月29日 10時) (レス) id: ae671ca5ff (このIDを非表示/違反報告)
*つむり* - すごく面白いです。小説の書き方とかも、すごく参考になります!続きが気になります……といったらプレッシャーになるかもしれませんが、応援してますので、気を詰めずに自分のペースで頑張ってください! (2021年5月3日 10時) (レス) id: a3e5e92948 (このIDを非表示/違反報告)
リタ - とても面白かったです! (2021年2月25日 19時) (レス) id: 800a931bab (このIDを非表示/違反報告)
ほたる - 下に同じくもっと伸びるべきだと思います!ゆっくりで良いので更新頑張ってください!体調にも気をつけてください! (2021年1月7日 18時) (レス) id: bff8d73ccb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:藍夜 | 作成日時:2019年11月14日 12時