お面の理由 ページ27
そんなことを思いながらまた甘味を食べ進めていれば、女将さんが私達の服装を見て「あら」と声をこぼした。
「もしかして、あなた達も夜に見回りをしてくれている警備の人かい?」
「え?」
「ああ、いえね。さっき出ていった子なんだけど、ここの常連さんで。その子と同じ服を来ているものだから、そう思ったのよ。」
「あの、あの子の名前って、何て言うんですか?」
「いつもありがとうね」と言って笑う女将さんに、思わずそんなことを聞いてしまった。
少し戸惑ったような顔をした女将さんに、思わず酷い怪我だったからどうしたのかと気になってしまって、と慌てて理由を作る。
怪我が名前を聞く理由になるわけないのに、何を言っているのかしら、私。
ハッとしてまた理由をつけようと口を開いた時、女将さんは少し悲しそうな顔をして言葉を発した。
「あの子の名前は、Aちゃんっていうんです。目元の傷は、幼い頃夜に
そのおかげで、あまり昼間は外を出歩けないんです。お面をつけているんですけど、長時間はやっぱり難しいみたいで。」
「お面を、つけてるんですか…?」
「ええ。あの子には姉もいるんですけど、姉から貰った大切なものなんだそうですよ。」
そう言って笑った女将さんは、「でも」と言ってまた顔を暗くさせる。
「…あの子のお姉さん、亡くなってしまったらしくてねえ。元々は、お姉さんがここの常連さんだったのよ。それを聞いたときは、私もとても悲しかったわ。
それからというもの、彼女どこか塞ぎ込んじゃって。昔から甘えるのが苦手な子だったけれど、今はもっと酷くなったような感じで。
来る度に、酷く疲れた顔して。心配だわ…。」
まるで我が子のことを心配するかのような女将さんの話を聞きながら、私は口元を抑えていた。
初めて聞く、彼女の素顔のこと。
熊というのは、おそらく鬼のことだろう。
多分、その鬼に両親を殺されたんだわ。
そしてさなさんに助けられた。
それでさなさんが狐のお面をあげたのね。
あのお面に、そんな意味があったなんて。
昼間外に出ない理由も、ずっとお面をしている理由も、私は全て初めて知った。
私、彼女のこと、何も知らないじゃない。
「…彼女に会ったら気にかけてやってください。何でも抱え込んでしまう子ですから。よろしくお願いします。」
そう言って頭を下げた女将さんを見ながら、私は何も言葉を返せなかった。
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アマリス(プロフ) - この夢主、魔法少女になったら真っ先に魔女化するな。で、人間体は死んで、魂ごと消えるあれですけど、まあそうなればみんな幸せなんでしょうね。夢主は魂ごと消滅するんですから。本当にそうなったら、どうなるんでしょうね。 (2022年5月22日 20時) (レス) id: 7d0074fb6d (このIDを非表示/違反報告)
ふじか(プロフ) - 更新楽しみに待っています! (2021年9月29日 10時) (レス) id: ae671ca5ff (このIDを非表示/違反報告)
*つむり* - すごく面白いです。小説の書き方とかも、すごく参考になります!続きが気になります……といったらプレッシャーになるかもしれませんが、応援してますので、気を詰めずに自分のペースで頑張ってください! (2021年5月3日 10時) (レス) id: a3e5e92948 (このIDを非表示/違反報告)
リタ - とても面白かったです! (2021年2月25日 19時) (レス) id: 800a931bab (このIDを非表示/違反報告)
ほたる - 下に同じくもっと伸びるべきだと思います!ゆっくりで良いので更新頑張ってください!体調にも気をつけてください! (2021年1月7日 18時) (レス) id: bff8d73ccb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藍夜 | 作成日時:2019年11月14日 12時