検索窓
今日:2 hit、昨日:17 hit、合計:90,863 hit

姉様の存在 ページ25

そんなサチさんに、何もないから心配するなという旨を伝えれば、まだ気になる様子ではあったが、あまり気を詰めないようにとだけ言って戻って行った。


変わったものにだけ目を向けていたけれど、こうして変わらないものもある。


サチさんの優しさ。お団子の味。売り物の品。


ここにあるものは、何一つ変わってはいない。


こういうものを、私は多くでも守っていかなければならないのだろう。

俄然やる気になるというものだ。


お団子を頬張りながらそんなことを思っていれば、ふと聞きなれた声が耳に届いた。


「わあ!ここのお店は初めて見るわ!ねえ、伊黒さん。少し入ってみましょうよ!」

「ああ、そうだな。君の好きなようにするといい。」


なんと間が悪いことだろうか。


会いたくもない人に会うことほど、嫌なことはないだろう。

よりにもよって、こんな所で出くわすことになるだなんて……。


まあでも、私は今お面をつけていないし、人から見えにくい位置だから、気づかれる心配もないだろう。

隊服を着ているからとはいえ、せいぜい隊士の一人だとしか思わないだろうし。


少し早くなった鼓動を抑えるように深呼吸を一つして、お団子を口に運んだ。


そうしてしばらく経ったのだが、一向に二人が出ていく気配がない。

というか、甘露寺様がお店の品を全種類頼んだものだから、より時間がかかっているようだった。


凄い食欲だなと思いつつ、その食べっぷりを眺めるサチさんの目がとても嬉しそうで、よほど美味しそうに食べているのだろうなとも思った。

私と接していなければ、二人はやはり優しい人達なのだろう。


その優しさを、少しでも向けてほしいと思っていた。


だけど何故だろうか。今は微塵もそんなことは思わない。ただ姉様の大切な存在だったから、この人達を守るだけ。ただそれだけだ。

姉様という存在がなかったら、私はどうしていたのだろう。


鬼にでもなっていたのだろうか、なんて。


ふっと少し自嘲気味な笑みをこぼして、羽織を脱いで脇に抱え、サチさんの元へと足を向けた。


「あら、もう行くの?」

『はい。これから少し別な用もあるので。』

「そう。また今度いらっしゃいね。」


サチさんはそう言うと、おまけで私の好きなきなこもちを持たせてくれた。

心が温まるのを感じながら頭を下げて、私はその場を軽い足取りであとにした。


帰ったら稽古をして、その後に食べよう。







「今の…もしかして……A…ちゃん…?」

もしかして→←変わったもの 変わらないもの



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (200 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
372人がお気に入り
設定タグ:鬼滅の刃 , かまぼこ隊
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

アマリス(プロフ) - この夢主、魔法少女になったら真っ先に魔女化するな。で、人間体は死んで、魂ごと消えるあれですけど、まあそうなればみんな幸せなんでしょうね。夢主は魂ごと消滅するんですから。本当にそうなったら、どうなるんでしょうね。 (2022年5月22日 20時) (レス) id: 7d0074fb6d (このIDを非表示/違反報告)
ふじか(プロフ) - 更新楽しみに待っています! (2021年9月29日 10時) (レス) id: ae671ca5ff (このIDを非表示/違反報告)
*つむり* - すごく面白いです。小説の書き方とかも、すごく参考になります!続きが気になります……といったらプレッシャーになるかもしれませんが、応援してますので、気を詰めずに自分のペースで頑張ってください! (2021年5月3日 10時) (レス) id: a3e5e92948 (このIDを非表示/違反報告)
リタ - とても面白かったです! (2021年2月25日 19時) (レス) id: 800a931bab (このIDを非表示/違反報告)
ほたる - 下に同じくもっと伸びるべきだと思います!ゆっくりで良いので更新頑張ってください!体調にも気をつけてください! (2021年1月7日 18時) (レス) id: bff8d73ccb (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:藍夜 | 作成日時:2019年11月14日 12時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。