突然の訪問 ページ22
救けた少女とその母親を家へと見送った時、母親は何度も頭を下げて礼を言い、少女は私に宝物だという綺麗なビー玉を一つ、小さな巾着袋に入れて寄越した。
後ろから舞衣や煉獄様の視線が刺さる中、その少女の目線に合わせて屈み、頭を撫でながら礼を述べれば、御守りにしてくれと微笑まれた。
こうして今回の任務は無事解決したのだが、またも面倒なことが増えてしまった。
おそらく今回の件も、舞衣が話に尾鰭を付けて他の人に話すはずだから。
それに、今回は煉獄様もその場を目撃している。信憑性は高まるわけだ。
任務が終わってすぐに私はその場を去ったから、舞衣がどういう行動をとったのかは分からない。
だけど、もういいのよ。どうだって。
私は鬼を殲滅するだけ。それだけのために鬼殺隊にいるのだから、余計なことは気にしていちゃ駄目よ。
人に好かれようだなんて、以ての外。
姉様の大切なものは守る。だけど、仲良くはしない。
それでもいいでしょう?姉様。
そう心の中で問うてみても、返事なんてものは返ってこない。
何が正しくて間違っているのかなんて、もう分からない。教えてくれる存在は、もういないのだから。
自室で少女から貰ったビー玉を手のひらで転がしながらそんなことを思っていると、玄関の方から「ごめんください」と声が聞こえてきた。
誰の声かまでは判別できず、一体誰が訪ねてきたのかと疑問に思いながらも、お面を付けて玄関へと急ぐ。
『はーい……え。』
扉を開けてその人の顔を見た瞬間に、私の口から驚きの声がもれる。
『どうして…貴方様がこんな所に…』
「急に訪ねて申し訳ない。少し、華月の話を聞きたくてな。」
そこにいたのは、 煉獄様だった。
何故私の家に来たのか。いったい何の用なのか。何を考えているのか。
あらゆる疑問が頭の中を巡り、混乱から何も言葉を発することができないでいると、煉獄様がまた私の名を呼んだ。
「華月、上がっても構わないだろうか。」
『……私は、貴方様に話すことなどございません。私に関わらないでください。目に映るのも嫌うほどなのに、こうして訪ねてくる理由など理解できかねます。
早急に、御引き取り願います。』
自分でも驚くほどの冷たい声で、相手を拒絶する言葉がするりと口に出た。
でも、これでいいのかもしれない。
もう関わらないと決めたのは私だ。
それに、今更何を話すというのか。
今まで、私に何か聞こうとしたことすらなかったくせに。
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アマリス(プロフ) - この夢主、魔法少女になったら真っ先に魔女化するな。で、人間体は死んで、魂ごと消えるあれですけど、まあそうなればみんな幸せなんでしょうね。夢主は魂ごと消滅するんですから。本当にそうなったら、どうなるんでしょうね。 (2022年5月22日 20時) (レス) id: 7d0074fb6d (このIDを非表示/違反報告)
ふじか(プロフ) - 更新楽しみに待っています! (2021年9月29日 10時) (レス) id: ae671ca5ff (このIDを非表示/違反報告)
*つむり* - すごく面白いです。小説の書き方とかも、すごく参考になります!続きが気になります……といったらプレッシャーになるかもしれませんが、応援してますので、気を詰めずに自分のペースで頑張ってください! (2021年5月3日 10時) (レス) id: a3e5e92948 (このIDを非表示/違反報告)
リタ - とても面白かったです! (2021年2月25日 19時) (レス) id: 800a931bab (このIDを非表示/違反報告)
ほたる - 下に同じくもっと伸びるべきだと思います!ゆっくりで良いので更新頑張ってください!体調にも気をつけてください! (2021年1月7日 18時) (レス) id: bff8d73ccb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藍夜 | 作成日時:2019年11月14日 12時