侮辱するな ページ20
そのまま彼女を抱えて攻撃を避けること、早数分。未だに誰も来なければ、打開策すら見つかっていない。
この子を危険な目に合わすわけにもいかないし、このまま避け続けていたって結果は変わらない。
そして、鬼に逃げられる可能性だって出てくるわけだ。
ここは一か八か、この子を走らせて、私がその隙に素早く頸を斬るか。
本当に影が本体なのかという確証もない。
だからこそ、これはかなり危険だ。
でも、他に手が___
「Aさん!!」
突如として聞こえてきた声。
それは、舞衣のものだった。
良かった、これでこの子の安全は保証される!
私の元に走ってきた彼女に、抱えていた女の子を託す。
『舞衣!この子を少しお願い!私はあの鬼の頸を斬るから!』
そう言って、鬼に向かって行った時だった。
私の横を、あろうことか舞衣が通り過ぎたのだ。
そして、分身の方の頸に刀をかけ、勢いよく振り抜く。
その行動に、頭が追いつかなかった。
何をしているの?あの子は、あの女の子は?
あなたがやるべき事は、あの子を守ることでしょう。民間人を守ることでしょう。
それなのに何故___
「おね…ちゃ……!!たすけ……!」
ふつふつと湧き上がる怒りが、その声によって一時的に冷め、急いでその影の頸を地面ごと斬り裂いた。
すると、辺りに断末魔が響き渡り、気がつけば少女の近くには母親らしき人が気を失っているのが見えた。
そして分身は溶け、影の中から本体が姿を現したが、ごろりと転がった頸は恨めしげに私を見つめ、すぐに灰となって散っていった。
私はそれを見届けると、呆けた顔をしている舞衣の隊服の胸ぐらを掴みあげる。
『舞衣!!あなたは何をしているの!!!今あなたがすべきことは、あの子を守ることだったはずよ!それなのに何故、頸を斬りに来た!』
「そんなの、手柄が欲しかったからに決まってるじゃない!!私は、私は師範みたいな立派な柱になるんだから!!」
"姉様みたいな"?
姉様みたいな、だって?
その言葉を聞いて、私の中の何かが切れる音がした。
そして、私は次の瞬間、舞衣の頬を強く叩いたのだった。
『私の、私の大切な姉様を、あなたの素晴らしい師範を、侮辱しないで!!姉様はあなたにそんなことを教えたのか!?
民間人よりも、自分を優先しろと姉様に教わったのか!!違うだろう!この愚か者!!!!』
この、恩知らず。
どこまで姉様を馬鹿にすれば気が済むのよ。
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アマリス(プロフ) - この夢主、魔法少女になったら真っ先に魔女化するな。で、人間体は死んで、魂ごと消えるあれですけど、まあそうなればみんな幸せなんでしょうね。夢主は魂ごと消滅するんですから。本当にそうなったら、どうなるんでしょうね。 (2022年5月22日 20時) (レス) id: 7d0074fb6d (このIDを非表示/違反報告)
ふじか(プロフ) - 更新楽しみに待っています! (2021年9月29日 10時) (レス) id: ae671ca5ff (このIDを非表示/違反報告)
*つむり* - すごく面白いです。小説の書き方とかも、すごく参考になります!続きが気になります……といったらプレッシャーになるかもしれませんが、応援してますので、気を詰めずに自分のペースで頑張ってください! (2021年5月3日 10時) (レス) id: a3e5e92948 (このIDを非表示/違反報告)
リタ - とても面白かったです! (2021年2月25日 19時) (レス) id: 800a931bab (このIDを非表示/違反報告)
ほたる - 下に同じくもっと伸びるべきだと思います!ゆっくりで良いので更新頑張ってください!体調にも気をつけてください! (2021年1月7日 18時) (レス) id: bff8d73ccb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藍夜 | 作成日時:2019年11月14日 12時