苦戦 ページ19
それから何度か攻撃を仕掛けてみるも、一向に頸を斬ることができないでいた。
いくら攻撃したとて、それはするりと鬼を抜けていってしまう。
一番厄介なのが、相手の攻撃は私に当たるけれど、私からの攻撃は当たらないというところだ。
このままでは駄目だ。一度落ち着かないと。よく考えて、この状況を打開しなくてはならない。
必ず、この血鬼術にも何かしら弱点がある。
それを見つけ出さなくてわ。
私は一度深く息を吸い込み、攻撃を避けながら観察をしてみた。
そもそもの話、この鬼は本当にこの場から攻撃をしているのだろうか。
もしかしたら、本体はどこかに隠れているのかもしれない。血鬼術には、そういう類もあったはずだ。
少なくとも、この血鬼術は己を物を通すものに変えることができるものか、分身のようなものを作り、それを操ることができるもの。
「くふふ、どうしたどうした。避けてばかりでは、余は倒されまいぞ?」
確かに口は動き、そこから声がしているようだけど、何か違和感がある。
そんなに距離は離れていないというのに、声が少しだけ遠いような。
…よし、次の攻撃で、ハッキリさせよう。
そうして飛んできた攻撃を避けつつ、その軌道を辿ってみる。
するとそれは、今動いている鬼とは少しだけズレた場所から飛んできていた。
その位置にあるものは、影だった。
やっとわかった。本体は影となり、分身のようなものを操っているに違いない。
わかったのなら話は早い。
このまま攻めて、頸を___
そう思った時だった。
「お母さーん!どこー!」
そんなとても幼い声が、その場に響いた。
見れば、大粒の涙を流しながら、先程鬼が出てきた家の中から一人の少女が出てきていた。
まずい。
そう思って咄嗟にその子を抱え、その場を退くと、さっきまで少女が立っていた場所に影が伸びていた。
この子まで食う気だったのね。
「おやおや、逃げられてしまったか。子は食う気はなかったのだが、自ら出てきたのなら仕方があるまい。
貴様の母親ごと、食らうてやるわ。」
そう言って、月光を背に不気味な笑みを浮かべる。
少女は小さく悲鳴を上げて、私にしがみついてきた。
この子を一人遠くに離れさせても、影が追いついてしまうのでは意味が無い。かと言って守りながらとなれば、動きが制限されてしまう。
あの鬼の頸さえ斬れれば、この子の母親を取り返すこともできるのに。
せめて誰か一人でも、来てくれないものか。
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アマリス(プロフ) - この夢主、魔法少女になったら真っ先に魔女化するな。で、人間体は死んで、魂ごと消えるあれですけど、まあそうなればみんな幸せなんでしょうね。夢主は魂ごと消滅するんですから。本当にそうなったら、どうなるんでしょうね。 (2022年5月22日 20時) (レス) id: 7d0074fb6d (このIDを非表示/違反報告)
ふじか(プロフ) - 更新楽しみに待っています! (2021年9月29日 10時) (レス) id: ae671ca5ff (このIDを非表示/違反報告)
*つむり* - すごく面白いです。小説の書き方とかも、すごく参考になります!続きが気になります……といったらプレッシャーになるかもしれませんが、応援してますので、気を詰めずに自分のペースで頑張ってください! (2021年5月3日 10時) (レス) id: a3e5e92948 (このIDを非表示/違反報告)
リタ - とても面白かったです! (2021年2月25日 19時) (レス) id: 800a931bab (このIDを非表示/違反報告)
ほたる - 下に同じくもっと伸びるべきだと思います!ゆっくりで良いので更新頑張ってください!体調にも気をつけてください! (2021年1月7日 18時) (レス) id: bff8d73ccb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藍夜 | 作成日時:2019年11月14日 12時