第卅陸話 ページ40
しばらくの静寂の後に、私の方を不安そうに見上げたてる子ちゃんが口を開いた。
「炭治郎さん、大丈夫ですかね…?」
少しだけ潤んだその瞳に、私は優しく微笑みかけて、二人の頭に手を置いた。
『大丈夫よ。炭治郎は強いもの。きっと無事で帰ってくるわ。だから何も心配しないで?君達のことは、私達がしっかりと守るから。』
そう言えば少しだけ安心したのか、小さく笑みを浮かべて、こくりと頷いてくれた。
こんなに小さい子達が、どれほどの恐怖を感じたのだろう。
この子達を見ていると、昔の私を思い出すようだった。
…私のように、失う前に見つけてあげられて、本当に良かった。
そう思って、思わず二人を抱きしめれば、いきなり清くんの手にしていた鼓が消えた。
あれからどれくらい経ったかは分からないが、炭治郎が鬼を倒したのだろう。
鼓が消えて慌て始めた二人に、炭治郎が鬼を倒したからだと言って落ち着かせていれば、炭治郎の色が微かに襖の奥から見えた。
「清!!てる子ー!!」
「キャァアア!」
「うわーっ!」
まだ少し混乱していたのか、二人は悲鳴をあげて私の羽織の裾をきつく握りしめた。
入ってきたのが炭治郎だと分かると、二人は少し顔を赤らめて、謝罪を述べた。
「さ、外に出よう。」
「はい。」
見るからに怪我が酷い炭治郎に、これ以上負担をかけるわけにもいかないため、私が清くんを背負い、外へ向けて走り出す。
「あっ、善逸と正一の匂いがする。外に出てるな。二人とも無事…アイタタタ。」
『大丈夫?走る速度遅くしようか?』
「いや、いいよ。早く外に出たいだろうしな。それに!俺は長男だから我慢できる!」
…その理屈は少し変な気もするが、炭治郎の言っていることも最もなため、そのまま玄関へと向かっていく。
そしてやっと玄関から外が見えた時、あの猪頭の子と、禰豆子ちゃんの入った箱を守りながら血を流す善逸の姿が目に入った。
「炭治郎…俺…守ったよ……。お前が…これ…命より大事なものだって…言ってたから……。」
「威勢のいいこと言ったくせに、刀も抜かねえこの愚図が!!同じ鬼殺隊なら戦ってみせろ!!」
そう言って、また猪頭の彼が善逸を蹴り飛ばす。
隣から次第に怒りの色が濃くなっていき、気がついたら炭治郎はその子のことを殴り飛ばしていた。
炭治郎。それも一応、御法度の内に入ると思うのよね、私は。
善逸の元へ駆け寄りつつ、呑気かもしれないがそんなことを思った。
247人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
masa - コスプレイヤーとして演じる程,隠がお気に入りです!闘える隠もいるはずと信じているので,この作品が大好きです!正に本編そのもの!東雲ちゃんも大好きです! (2021年1月7日 1時) (レス) id: 8a22c9168c (このIDを非表示/違反報告)
カナ - 無限列車編、楽しみです!煉獄さんンンンン!!!!!!!! (2021年1月6日 0時) (レス) id: 5eabcf99e7 (このIDを非表示/違反報告)
R_yomoya(プロフ) - めっちゃさいっこうです!無限列車編はどうなるのか…! 煉獄さん生存ifであることを祈っています…! (2021年1月5日 14時) (レス) id: 241a1cc2c3 (このIDを非表示/違反報告)
天深 - とても好きな作品でした(;_;) (2020年1月24日 16時) (レス) id: 456e47df85 (このIDを非表示/違反報告)
すンず - めっちゃ最高!!頑張って下さい!応援しています! (2019年10月25日 19時) (レス) id: 6823c0d55a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:藍夜 | 作成日時:2019年10月6日 13時