知らなかった想い ページ9
自室の前に着いた時、私の心の準備を待たずして翠蓮は襖を開け放った。
「おい夏目。頼まれた物、作り終えたぞ。」
「うわあ!すごいな!これを翠蓮が作ったのか?ありがとう。大事にするよ。」
「まあ俺にかかればこんなもんだな!して夏目。こいつのも見てやってくれ。」
そう言って半ば無理矢理夏目の前に出される。
顔を合わせるのが無性に恥ずかしくて、思わず顔を逸らしてしまったため、今夏目がどういう顔をしているのか分からない。
分からないからこそ、今訪れている静寂が嫌に怖い。
恐る恐る夏目の方を向くと、物凄い綺麗な笑顔を向けられた。
「とても綺麗だな!Aにすごく似合ってるよ。」
『よくそんな恥ずかしげもなく言えるね夏目…。』
赤くなっているであろう顔を袖で隠して、目だけを夏目に向ける。
その行動に、夏目はオドオドしだしてしまった。
「わ、悪い。なにか変な事言ったか?」
『…いや、夏目は悪くないよ。大丈夫。』
そんな私たちの会話を聞きながら肩を震わせている翠蓮に、小さく蹴りを入れて顔を隠すのをやめる。
そして、精一杯の笑顔で夏目に礼を言った。
『ありがとう、夏目。似合ってるなら良かった。』
そう言えば、夏目も安心したように微笑んだ。
私の横では、翠蓮がほほうと言ってニヤリと笑っていた。
なんだこいつは。
そうは思ったが、夏目もそろそろ帰らなくてはいけないため、玄関まで送った。
『今日はごめんね、心配かけちゃって。』
「いや、いいんだ。翠蓮、これ作ってくれてありがとな。じゃあA、また明日。」
『うん。また明日。』
手を振りながら、夏目を見送り中に入る。
今日は翠蓮も一緒に夕飯を食べて、少しだけ五人で思い出話に花を咲かせた。
そして変な方に話はそれ、またもや私が夏目のことを好きだという話になっていた。
「なんだいA。今頃自分の気持ちに気づいたのかい?」
「てっきりもうお気づきなのかと思っておりました。」
『…何よ二人して…。』
「色恋沙汰に疎い俺でも気づいてたぞ。」
「まあ仕方ないんじゃないか?Aはそういうの無縁だったわけだしさ。」
……翠蓮の言う通り、私は人間より妖が好きだったから、そういうことには無縁だった。
だけど、私が知らなかったこの想いを知れたことは少しは嬉しい。
恋なんて興味もなかったのに、実際意識するとおかしくなりそうで。
……明日からも夏目といつも通り、ちゃんと話せるのだろうか。
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うたプリ大好き?(プロフ) - 完結になっていますが、これで終わりなのでしょうか? (2020年10月18日 11時) (レス) id: 48370e286a (このIDを非表示/違反報告)
白猫 - この作品面白いです。更新頑張ってください!続き楽しみにしています。 (2019年9月27日 22時) (レス) id: fe959518f7 (このIDを非表示/違反報告)
蝶華 - 初めてこのお話を読みましたが凄く良いです!これからも頑張ってください!応援しています! (2019年9月2日 21時) (レス) id: 70b9e10207 (このIDを非表示/違反報告)
しろ(プロフ) - 更新お疲れ様です!最近夏目友人帳にニャンコ先生関連ではまっていてこの作品もとても楽しませてもらっています!徹夜して読みましたww 体調に気をつけて頑張ってくださいっっ!! (2019年7月20日 15時) (レス) id: a81fa4594d (このIDを非表示/違反報告)
藍夜(プロフ) - かなとさん» すみません、すぐに気づいて直してきました。ご指摘ありがとうございます! (2019年6月7日 22時) (レス) id: 4ffe17b14f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藍夜 | 作成日時:2019年6月7日 22時