お誘い ページ16
今日のお祭りが楽しみすぎて早く目覚めてしまった私は、皆が起きる時間になるまで旅館内を歩くことにした。
旅館内、と言っても、私には行きたい部屋があったため、そこに向けて歩みを進めた。
そして行き着いた所は、サヤギと初めて出会った部屋。
なんの偶然か、その部屋には誰も泊まっておらず、スっと静かに襖を開けて、中へと入り込む。
『サヤギ。いる?』
「はい。お呼びでしょうか、A様。」
私が声をかければ、サヤギは正座をした状態で目の前に現れた。
優しく微笑むその姿は、いつ見ても綺麗だと思う。
私はサヤギの前に座ると、彼女の手を握って話を切り出した。
『ねえサヤギ。今晩妖のお祭りがあるのだけれど、あなたも一緒に来ない?』
「祭り、でございますか?」
『そうなの。私の友達が誘ってくれたんだけど、ここから近くだから、せっかくだしあなたもどうかと思って。』
「良いのですか?A様は、夏目様方と向かうのでしょう?」
心配そうに聞いてくるサヤギに、思わず笑みがこぼれる。
そんなに遠慮しなくてもいいのに。
くすくすと笑う私を不思議そうに見つめているサヤギに、謝りつつも言葉を続けた。
『大丈夫だよ、サヤギ。夏目達なら、人数が多い方が楽しいからって、きっと許してくれるわ。
それに、友達の妖達も優しいから大丈夫。だから、どうかしら?』
そう聞いてみると、サヤギは少し考える素振りをした後に、恐る恐ると言ったように口を開いた。
「あの…私も、A様とご一緒したいです。」
恥ずかしそうにモジモジとしながら言われたその言葉に、嬉しさと可愛さが混じり、思わず抱きしめてしまった。
出会った当初はあれだけ憎悪にまみれていたのに、今ではこんな穏やかで、いい子なんだもの。
よかった。あの時に私が見つけてあげられて。
「A様……?」
『急に抱きついてごめんね。じゃあ決まり!また夕方頃に迎えに来るわね。』
「はい!楽しみにしております。」
『それじゃ、私は部屋に戻らないと。またね。』
そう言って手を振りながら、襖を閉めて部屋へと帰った。
帰り着くと皆も起きていて、早速サヤギのことについて話す。
すると案の定、あっさりと許可された。
しかも、私の想定していた通りの理由で。
その事にまた思わず笑いがもれてしまったが、何でもないと言ってその場を流した。
今日はなんでもないことが何故だか面白い。
それはきっと、お祭りで浮かれているからだろう。
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うたプリ大好き?(プロフ) - 完結になっていますが、これで終わりなのでしょうか? (2020年10月18日 11時) (レス) id: 48370e286a (このIDを非表示/違反報告)
白猫 - この作品面白いです。更新頑張ってください!続き楽しみにしています。 (2019年9月27日 22時) (レス) id: fe959518f7 (このIDを非表示/違反報告)
蝶華 - 初めてこのお話を読みましたが凄く良いです!これからも頑張ってください!応援しています! (2019年9月2日 21時) (レス) id: 70b9e10207 (このIDを非表示/違反報告)
しろ(プロフ) - 更新お疲れ様です!最近夏目友人帳にニャンコ先生関連ではまっていてこの作品もとても楽しませてもらっています!徹夜して読みましたww 体調に気をつけて頑張ってくださいっっ!! (2019年7月20日 15時) (レス) id: a81fa4594d (このIDを非表示/違反報告)
藍夜(プロフ) - かなとさん» すみません、すぐに気づいて直してきました。ご指摘ありがとうございます! (2019年6月7日 22時) (レス) id: 4ffe17b14f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藍夜 | 作成日時:2019年6月7日 22時