五石 ページ7
あいつが転校してきた時は、それこそ興味なんてものはこれっぽっちもありゃしなかった。
だが、月日が経つにつれて、Aも俺と同じなのだと分かった。
ただ静かに本を読んでいるあいつに、次第に興味を持つようになった。
よくよく見れば、本の内容はかなり難しそうなものばかり。
俺らの歳じゃ、まず読まねえような本。
それをあいつは、まるで本に恋でもしてるかのように、ゆっくりと、一文字一文字を噛み締め読んでいるのだ。
その姿に惚れたんだと思う。
当時の俺は気付いてすらいねえだろうがな。
俺が初めて声をかけた時、あいつは一度だけじゃ反応を示さなかった。
何度も声をかけたが、一向に反応しない。少し強めに呼ぶと、肩を大きく跳ねさせ、勢いよく俺の方を向いた。
それが始まりだった。
それから、あいつのことについて知っていくにつれ、俺はますますAに惹かれていった。
家の本を全部読破し、着々と色んな知識を取り入れていく。終いには、自分も体験してみたいと言って、色んなことをするようになった。
最初こそ知らなかったが、Aは大人しくしっかりしてそうに見えて、活発だしどこか抜けていて、意外と馬鹿だ。
そんなところにも、俺は惚れちまったんだろう。
ククク、全く、恋愛なんてろくなもんじゃねえな。
翌朝、早くから川へ向かい石器を作り始めた。
ひたすら石と石をぶつけ合わせ、削ること数時間。試しまくったかいもあり、ようやくコツを掴んだ。
石器の作り方も、すでに経験していたAから予習済みだ。
あいつにはつくづく驚かされる。
いったいどこで経験してくるんだが。
石器を手に入れてから蔓を切り、繊維を解してキリモミ式のための紐を作った。
あとはその紐と枝で回転補助棒を作れば、簡単に火を起こすことができた。
こりゃA先生様々だな。
あいつの好奇心と知識に、俺は今生かされている。あいつに出会ってなかったら、俺は今頃死んでるかもしれねえ。
あいつとの話題を作りたかったにしろ、色んなことを聞いといて正解だったな、こりゃ。
それからは罠をしかけ、肉を確保し、その皮で服を作り、時間をかけて少年様の夢であるツリーハウスも建てたことで、衣食住を手に入れた。
「さーて、いい加減「疲労感なんざ無視が合理的」スイッチも限界か……。」
そう呟いた瞬間に、案の定俺は泡を吹いてぶっ倒れた。
流石にこれを一人でやってのけるには、俺のありもしねえ体力じゃこうなるわな。
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藍夜(プロフ) - イチュキさん» コメントありがとうございます!そうですね、そういった身のこなしをするシーンも書きたいので、楽しみにして頂ければ幸いです! (2020年5月3日 9時) (レス) id: 1084e77889 (このIDを非表示/違反報告)
イチュキ - デュララ〇の臨也の真似してパルクールとかナイフさばきが上手い、とかありませんかね??さも当然のようにそういうことやって欲しいですよね!氷月にちょいと警戒るレベルで。あぁ、続きが気になります!是非!更新!を!まってます!! (2020年4月30日 16時) (レス) id: 301f9252cd (このIDを非表示/違反報告)
藍夜(プロフ) - りんごさん» ありがとうございます!期待にお応えできるように、精一杯頑張りますね!これからもどうぞ、この作品をよろしくお願いいたします。 (2020年4月9日 13時) (レス) id: 1084e77889 (このIDを非表示/違反報告)
りんご - 藍夜さん» コメ返ありがとうございます!よかった…いきなり他ジャンル出しちゃったらどうしようと思ってました。すみません。私もそのとあるアニメで歴史に興味(ryこれからも読ませていただきます!お体に気をつけて更新頑張ってください! (2020年4月7日 20時) (レス) id: ed57538bc3 (このIDを非表示/違反報告)
藍夜(プロフ) - りんごさん» コメントありがとうございます!そう言って頂けるだけで、とても嬉しい限りです!その通りです…!とあるアニメはまさにそれです!私自身それで歴史に興味を持ったので、今回設定に加えてみました! (2020年4月4日 20時) (レス) id: 1084e77889 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藍夜 | 作成日時:2020年4月2日 1時