オタクも磨けば天才にってね【Dr.STONE】

四石 ページ6

千空side


俺の目が何も映さなくなってから、途方もない数を数えて始めて、1173億5489万3870秒。

俺は目覚めた。


体は動かせるし、視界も良好。

おかげで色々考える余裕ができた。それにメモだって残せるしな。


お元気一杯やりてえとこだが、最優先は現場の保全だ！俺のボディ自体が値千金の謎解きの手がかりになる。


倒れてた位置に、石でポーズを型取り、検証できる時のために一片残らず石片を確保した。


するといきなり、真後ろの木からガサリと音が聞こえ、そちらを見やる。

そこには数匹猿がいて、俺を数秒見つめた後に一目散に逃げていった。


……初めて見んのか？


辺りを見てみると、石像がごろごろ転がっている。

こりゃ文明は滅びてんな。あるいは俺が＿＿


｢地球に初めて生まれた、一匹目のツルピカ猿か。唆るぜこれは…！！｣


俺が数えていた秒数を暗算して、今は西暦5738年4月1日。

暗算するにも骨が折れたが、これからはもっと骨が折れることの目白押しだ。


｢ククク、見てやがれツルピカ猿の力！宇宙に行けるほどの科学文明、俺がゼロから築いてやるよ……！！｣


まずは火からだ。

だいぶ昔にAからやり方は教わってるし、物は試しだ。やってみるしかねえ。


しかし、まあ…


そう簡単に上手くいくわけねえわな。

体力バカの大樹でも、手芸部ウルトラ器用の杠でも、変に経験が豊富なAでもねえんだ。

こんな原始的なキリモミ式が、多湿の日本でサクッと点くわけねえじゃねえか。


『他にもやり方教えたじゃん』と脳内でAが呆れ顔を浮かべた。

これは復活方法が分かったら、早急にAを起こした方が良さそうだな。

知識をただ持っているのと、実際にやってみるのじゃわけが違え。

実際にやった事のあるAなら、この状況下でもなんとかできんだろ。


疲れきった四肢を投げ出し、大の字になりながらも思考を巡らす。


日も落ちてきたし、今無闇に動くのは合理的じゃねえ。明日早くから動くしかねえか。


と明日のことを考えた辺りで、疲れからか脳が変な方向に思考を働かせていく。


合理性を重視してきたつもりだったが、こりゃそうとも言えねえな。恋愛脳に侵されたわけではねえが、どうしてもAのことを考えちまう。


効率よく科学の勉強をし、それ以外の知識を付けるためにもAに声をかけた。


が、今思えば、それだけが理由だったわけではない。ただ単にあの頃の俺は、あいつに一目惚れでもしてたんだろう。

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