四十一石 ページ43
邪魔な思いを消し去るべくひたすらラーメンを作り続けていると、どこからかとても懐かしい「コーラ」という単語が聞こえてきた。
「千空。君達の仲間か。」
「違うな。」
「金狼、銀狼。小競り合いは中断だ。」
「なんだどうし…」
「説明は省く。敵だ。」
コハクがそう言うやいなや、一斉に岩陰にいた男を囲んだ。
その無駄のない綺麗な動きに感心し、場違いだが目を輝かせる私の前に、自身の背に隠すように千空が前へ出た。
ああ、司の手の者だったら私の存在を知られるわけにはいかないものね。でもここまでしなくてもいいのに。嘘の一つや二つ、相手にバレる心配もなくつくことができるんだから。
そんなことを考えながら、刃を向けられている男を千空の肩越しに少しだけ見てみた。
「長髪男なんて知らないなぁ。俺は石化がとけてから、ずっと一人だけど…?」
そう言ってこっちを振り返った男の顔は、書店で何回か見たことがあった。
確か、名前は"あさぎりゲン"とかいったかしら。いつだったか、その人が書いた心理テストをやった記憶がある。
どういう奴か分かるまでは、こいつの前では迂闊なことを言えないし、顔色にも出しちゃいけないわね。
「いやぁ、勝手にラーメンいただいちゃったのは謝るよ。だからさ、この武器おろしちゃってくんない?もう怖くて足プルップルで。せっかくのラーメンこぼしちゃいそうでね。
今日も一人で食料探してたらビックリ!懐かしいラーメンの香りがしてフラフラ〜っとさ。」
刃を向けられているのに震えどころか、顔色を一切変えもしない。
これを見たところ、嘘を隠す気もないようね。
こういうタイプはだいたい、優位な方に味方をする。取り入れることは十分に可能だろう。
信用できるやつかは置いといての話だけれど。
「ククク、まあそういうことにしといてやるよ。ともかく、世の中タダ食いはねえ。ラーメン食ったやつは全員!仕事があんだ。」
「仕事?」
「皿洗いとか?」
そんなに簡単な仕事だったら、どれだけ楽でしょうね。
***
「うおおおおお!」
そんな雄叫びが辺りに響く。
フーフー機能をパワーアップ改造した、製鉄所レベル2で、私達はひたすらに製鉄作業に勤しんでいた。
これほどの人数にこれくらいの勢いなら、確実に鉄が完成しそうね。
「あさぎりゲン。大樹と杠は元気にやってっか?」
もうひと踏ん張りだと自分を鼓舞し、必死に腕を動かす後ろで、千空がゲンにそうカマをかけた。
203人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
藍夜(プロフ) - イチュキさん» コメントありがとうございます!そうですね、そういった身のこなしをするシーンも書きたいので、楽しみにして頂ければ幸いです! (2020年5月3日 9時) (レス) id: 1084e77889 (このIDを非表示/違反報告)
イチュキ - デュララ〇の臨也の真似してパルクールとかナイフさばきが上手い、とかありませんかね??さも当然のようにそういうことやって欲しいですよね!氷月にちょいと警戒るレベルで。あぁ、続きが気になります!是非!更新!を!まってます!! (2020年4月30日 16時) (レス) id: 301f9252cd (このIDを非表示/違反報告)
藍夜(プロフ) - りんごさん» ありがとうございます!期待にお応えできるように、精一杯頑張りますね!これからもどうぞ、この作品をよろしくお願いいたします。 (2020年4月9日 13時) (レス) id: 1084e77889 (このIDを非表示/違反報告)
りんご - 藍夜さん» コメ返ありがとうございます!よかった…いきなり他ジャンル出しちゃったらどうしようと思ってました。すみません。私もそのとあるアニメで歴史に興味(ryこれからも読ませていただきます!お体に気をつけて更新頑張ってください! (2020年4月7日 20時) (レス) id: ed57538bc3 (このIDを非表示/違反報告)
藍夜(プロフ) - りんごさん» コメントありがとうございます!そう言って頂けるだけで、とても嬉しい限りです!その通りです…!とあるアニメはまさにそれです!私自身それで歴史に興味を持ったので、今回設定に加えてみました! (2020年4月4日 20時) (レス) id: 1084e77889 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:藍夜 | 作成日時:2020年4月2日 1時