二十一石 ページ23
少しぎこちない抱きしめ方と撫で方に、千空なりの優しさが伝わってきて、感情的になっていた心が落ち着いた。
でも、千空の研究を疑っていたわけではないけれど、本当に起きなかったらと怖かったのは事実。
これ以上、大切な人を失いたくはないから。
母さんも父さんも、お兄ちゃんだって、早くに死んでしまった。
それがどれだけ悲しくて、寂しくて、辛かったことか。
それが分かっているのか、悪態をついているのとは裏腹に、千空はしばらく私の頭を撫で続けていた。
そして少し経ち、私達はまた移動するための準備を始めた。
その際、一応当て木をということで、器用に布を切った杠が、千空の首に木をあてがった。
いらねえとか言いつつ、布を緩めるだけで木は取らないのね。なかなかに可愛いやつ。
「もう治ってんだよ。ククク、千空博士の身を挺した人体実験は成功だ。石化解除の修復力は思いのほかクッソ高ぇぞ!」
「わははは!石化のせいでこんなに苦労してるのに、その石化のおかげで治るとはなー!!
石鹸作った時言ってたじゃないか。いやむしろ!この石化こそまさにその、医者がわりの命の石__
Dr.STONEじゃないかー!!!」
…そうね。考えてみれば、おかしな話だ。
"石化が解ける時、周辺もろとも修復される"
なんともご親切で、ありがたい現象だろうか。
そもそも一体誰が、何のためにこの石化現象を引き起こしたのだろう。
これは私達人類への「攻撃」なのか、はたまたそうではないのか……考えたって、今は答えなんて見つからない。
とりあえずは、一刻も早くここから立ち去らないと。
そうして、私達は着々と準備を進めていく。
「首が治るならバラバラ石像も、ひっつけて復活液かけたらつながりました!みたいなことないかなあ〜。」
「初っぱなに試したが、バラバラ死体に戻るだけだったな。こんな修復力高ぇならなんで_」
そこまで言うと、千空は何やら考え込む。
私はというと、千空の言ったバラバラ死体を想像し、少しだけ気分が悪くなっていた。現物を見た千空はより酷かったことだろう。
考え込んでいた千空は、何やら杠にミッションを課したようで、伝えられた杠は何とも言えない声を発した。
「なんだ、内緒話か?ズルいぞ、俺も混ぜろー!」
「んっと、これから司くんとこに戻ろうかなーって。」
「おおそうか!司のとこか!
なに!!?」
『うわうるさっ。』
耳元で叫ばれた私は、驚くよりも先にそんな言葉が出た。
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藍夜(プロフ) - イチュキさん» コメントありがとうございます!そうですね、そういった身のこなしをするシーンも書きたいので、楽しみにして頂ければ幸いです! (2020年5月3日 9時) (レス) id: 1084e77889 (このIDを非表示/違反報告)
イチュキ - デュララ〇の臨也の真似してパルクールとかナイフさばきが上手い、とかありませんかね??さも当然のようにそういうことやって欲しいですよね!氷月にちょいと警戒るレベルで。あぁ、続きが気になります!是非!更新!を!まってます!! (2020年4月30日 16時) (レス) id: 301f9252cd (このIDを非表示/違反報告)
藍夜(プロフ) - りんごさん» ありがとうございます!期待にお応えできるように、精一杯頑張りますね!これからもどうぞ、この作品をよろしくお願いいたします。 (2020年4月9日 13時) (レス) id: 1084e77889 (このIDを非表示/違反報告)
りんご - 藍夜さん» コメ返ありがとうございます!よかった…いきなり他ジャンル出しちゃったらどうしようと思ってました。すみません。私もそのとあるアニメで歴史に興味(ryこれからも読ませていただきます!お体に気をつけて更新頑張ってください! (2020年4月7日 20時) (レス) id: ed57538bc3 (このIDを非表示/違反報告)
藍夜(プロフ) - りんごさん» コメントありがとうございます!そう言って頂けるだけで、とても嬉しい限りです!その通りです…!とあるアニメはまさにそれです!私自身それで歴史に興味を持ったので、今回設定に加えてみました! (2020年4月4日 20時) (レス) id: 1084e77889 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藍夜 | 作成日時:2020年4月2日 1時