十石 ページ12
観点を戻して楠を一周してみても、杠の姿はどこにもない。
…別な場所に流されてしまった?
これは早々に詰んだのでは?
やばいな。ここは素直に、起きているであろう千空をもう一度探してみるか?
でももし、もし千空もいなかったら?
……この何もない世界で、私一人で生きていかなきゃいけなくなるかもしれない。
そう考えた瞬間に、言い知れぬ不安と恐怖が私を襲った。
せめて、何か手がかりが見つけられたら……。
そう思いながら楠を触ると、ふと、木の幹に何か書いてあるのを発見した。
『「川下れデカブツ」……?』
これ……きっと千空が大樹宛に書いたやつだ!!
デカブツなんて言うの、千空くらいだもの!
大樹なら必ず、起きて一番に杠の元へ来る!それを見越して、千空はここに道を記したんだ!
そしてここに杠がいないのは、既に起きていた大樹がこれを見て、杠を連れて千空の元へ行ったから。きっとそう。
……もし杠も大樹もいなかったとしても、千空がいるのは確実だ。
そうと決まれば、早速行きますか!
私は意気揚々とその場を離れ、川を更に下っていった。
と行きたいところだが、それよりも好奇心の方が勝り、少しだけ寄り道をしながら同じ方角を目指した。
それにしても、本当に人が石化したんだなあ。
ふと、石化した人達の姿を見てそう思った。
不思議なこともあるもんだよね。こうなったのには、必ず原因があるんだろうけどさ。
こんなこと起こるの、アニメくらいだと思ってたわ。
まあでも、ちょっとこういう暮らしに興味はあったし、好都合っちゃ好都合。何事も前向きに考えなきゃね。
前から色々体験とか行ってて良かったあ。
やっぱり知識は色々身につけとくもんだね。
そんなことを考えながら、時には木に登ったり、駆け回ったりしながらも歩を進める。
そろそろ千空のいる場所に着いてもいい頃なんだけど、一向に人が住んでいそうな場所には辿り着かない。
……今日中に見つけられなかったらどうしようか。夜に動くのはお利口な考えではないよね。
そしたら、まず火を起こせる道具を作らないと。打製石器とか磨製石器は時間がかかるし、今日のご飯は最悪抜きでも大丈夫。
日が沈み始めたら、ユミギリ式のを作り始めるか。紐とかどうしようかなー。蔓とかで代用できるか?
「A!?」
『え?』
思考の渦から戻され、突如聞こえた声の方に目を向けると、とても懐かしく、最も会いたかった人達がそこにいた。
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藍夜(プロフ) - イチュキさん» コメントありがとうございます!そうですね、そういった身のこなしをするシーンも書きたいので、楽しみにして頂ければ幸いです! (2020年5月3日 9時) (レス) id: 1084e77889 (このIDを非表示/違反報告)
イチュキ - デュララ〇の臨也の真似してパルクールとかナイフさばきが上手い、とかありませんかね??さも当然のようにそういうことやって欲しいですよね!氷月にちょいと警戒るレベルで。あぁ、続きが気になります!是非!更新!を!まってます!! (2020年4月30日 16時) (レス) id: 301f9252cd (このIDを非表示/違反報告)
藍夜(プロフ) - りんごさん» ありがとうございます!期待にお応えできるように、精一杯頑張りますね!これからもどうぞ、この作品をよろしくお願いいたします。 (2020年4月9日 13時) (レス) id: 1084e77889 (このIDを非表示/違反報告)
りんご - 藍夜さん» コメ返ありがとうございます!よかった…いきなり他ジャンル出しちゃったらどうしようと思ってました。すみません。私もそのとあるアニメで歴史に興味(ryこれからも読ませていただきます!お体に気をつけて更新頑張ってください! (2020年4月7日 20時) (レス) id: ed57538bc3 (このIDを非表示/違反報告)
藍夜(プロフ) - りんごさん» コメントありがとうございます!そう言って頂けるだけで、とても嬉しい限りです!その通りです…!とあるアニメはまさにそれです!私自身それで歴史に興味を持ったので、今回設定に加えてみました! (2020年4月4日 20時) (レス) id: 1084e77889 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藍夜 | 作成日時:2020年4月2日 1時