零石 ページ2
自分で言うのもおかしな話だが、私は昔から、周りとは少しズレた存在だった。
小学校低学年にも関わらず、様々な小説を読み漁り、作品によって違う比喩や言い回し、世界観の虜となっていた。
そうすると、自ずと友達というものは減っていくわけで。
極めつけに私の癖である、集中しすぎると周りの声が聞こえなくなるということもあり、尚更周りとは馴染めなかった。
だが、転校した先で彼と出会った事で、私の日常は一気に色付き、より輝きを増したのである。
『橘Aです。よろしくお願いします。』
小学校に通い始めて三年目の春、私は母の療養のため、転校を余儀なくされた。
初対面の人と話すのが苦手な私は、自己紹介は名前だけにして、その後は先生に促されるままに席へと向かう。
そしてふと目線を上にあげると、私のことを物珍しそうに見ているのではなく、とても面白そうに図鑑を読み、私には目もくれない男の子が目に付いた。
あ、この子も私と一緒なんだ。
そう思い、何故だか少し嬉しくなったのを覚えている。
それでも、私は自分からその子に関わろうとはしなかった。
よく通学路の河原で、実験をしているのは見かけていたが、他人に興味があまりないのと、声をかけれないのとで、話しかけずにいること数ヶ月。
「おい、テメーだ転校生!!」
その声に驚いて、読んでいた本から急いで顔を上げる。
すると、綺麗な赤い瞳と目が合った。
綺麗な赤。まるで宝石みたい。
そんなことを考えていると、いきなり顔を近づけられ、思わず後ろに仰け反る。
「テメー、今までどんな本読んできた。」
『え、何で?』
「質問を質問で返してんじゃねえよ。」
突然そんなことを聞かれたものだから、思わず質問で返してしまったが、初対面なのにこんなこと質問してくるこの人もこの人だと思う。
まあ、質問されたのに返さないのもよくないだろう。
『…太宰治、とか、有名な作家さんの本だよ。あとは伝記とか、歴史の本とかかな。』
そう言うと、その子は喉を鳴らすような独特の笑い方をして、こう言ったのだ。
「良いじゃねえか。文系な奴の知識得るのも、悪かねえ。おい、テメー明日から俺に付き合え。
お前を歴史の立会人にしてやるよ。」
何を言ってるんだこの人は。
そう思ったものの、この人の目からは嘘なんてものが一つも見当たらない。
むしろ真っ直ぐで、曇りのない眼。
気がつけば私は、よく考えもせずに、二つ返事でそれを了承していた。
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藍夜(プロフ) - イチュキさん» コメントありがとうございます!そうですね、そういった身のこなしをするシーンも書きたいので、楽しみにして頂ければ幸いです! (2020年5月3日 9時) (レス) id: 1084e77889 (このIDを非表示/違反報告)
イチュキ - デュララ〇の臨也の真似してパルクールとかナイフさばきが上手い、とかありませんかね??さも当然のようにそういうことやって欲しいですよね!氷月にちょいと警戒るレベルで。あぁ、続きが気になります!是非!更新!を!まってます!! (2020年4月30日 16時) (レス) id: 301f9252cd (このIDを非表示/違反報告)
藍夜(プロフ) - りんごさん» ありがとうございます!期待にお応えできるように、精一杯頑張りますね!これからもどうぞ、この作品をよろしくお願いいたします。 (2020年4月9日 13時) (レス) id: 1084e77889 (このIDを非表示/違反報告)
りんご - 藍夜さん» コメ返ありがとうございます!よかった…いきなり他ジャンル出しちゃったらどうしようと思ってました。すみません。私もそのとあるアニメで歴史に興味(ryこれからも読ませていただきます!お体に気をつけて更新頑張ってください! (2020年4月7日 20時) (レス) id: ed57538bc3 (このIDを非表示/違反報告)
藍夜(プロフ) - りんごさん» コメントありがとうございます!そう言って頂けるだけで、とても嬉しい限りです!その通りです…!とあるアニメはまさにそれです!私自身それで歴史に興味を持ったので、今回設定に加えてみました! (2020年4月4日 20時) (レス) id: 1084e77889 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:藍夜 | 作成日時:2020年4月2日 1時