１話 エンジョイ青春ライフ！ ページ3
『んんっ、ふぁ〜！』
俺は目を開いて伸びをする。
窓から差し込む朝日が気持ち良い。
『おはよう、兄さん』
胸に手を当てれば、寝ぼけた頭の中で声が響く。
──ああ、よく眠れて良かったなぁ──
──遅刻すんなよ、A──
『わかってるよ』
俺はベッドから立ち上がって服を着替えた。
昨日貰ったばかりの制服。
新品だからか何だか良い匂いがする。
鏡の向こう側に立つのは立派な学生だ。
──中々似合ってんじゃねぇの？──
『そうかな？ありがとう』
着慣れない服だから気をつけないとな。
俺は１人部屋を出た。
他の３人はまだ眠っている。
寮では一部屋を４人で使う。
これも慣れないといけないな。
ここはサバナクロー寮。
不屈の精神を持つ者が集まる。
いわゆる野郎集団だ。
──お前、細いから浮いてるんじゃないか？──
『はぁ？俺だって強いし〜！』
──ハハハッ！──
──どうだかなぁ──
『またそうやって俺を馬鹿にして……』
寮の談話室では朝の日差しを浴びた滝がキラキラと輝いていた。
サバナクロー寮はどこもかしこも乾燥している。
なぜなら寮自体も岩で出来ているからだ。
そんな中でこの滝は今後も俺に潤いを与えてくれる貴重な場所になりそうだ。
『あ、先輩。おはようございます』
現れたのはラギー・ブッチ先輩。
昨日は寮長のすぐ隣にいた先輩だ。
恐らく、副寮長。
一目でわかる。
この人は実力者だ。
ラギー「おはようッス。え〜っと……」
『１年のA・ルシファーです。今日からよろしくお願いします』
俺は丁寧に頭を下げた。
ラギー「ああ、A君！よろしくッス」
『先輩も早起きなんですね』
ラギー「そうッスよ〜。レオナさんを起こしに行かないといけないんだから、毎朝大変ッス。じゃ、俺はこれで……」
ラギー先輩は軽く会釈をして俺の隣をすり抜ける。
──A──
俺はラギー先輩の腕を掴んだ。
ラギー「何スか？」
『財布、返してください』
ラギー「何のことッスか？」
『見てました。返してください』
俺はラギー先輩をジッと見つめる。
すると、ラギー先輩は案外すぐに勘弁したのか俺の財布を手渡した。
ラギー「いや〜、新入生にバレたのはこれが初めてッスよ。中々やるんスね」
『ええ、まあ』
殆ど兄さんのおかげだけど。
『俺達を舐めないでくださいよ』
そう言ってラギー先輩と別れた。
──オレが気付いて良かったなぁ──
『うん』
──気を付けろよ──
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作者名：亜叶緒夜鳴 | 作成日時：2023年5月20日 21時
