10 開戦のScrap ページ11
私の足は動かなかった。
「アネキ!一緒に行きましょう!」
男の人達も私に手を差し伸べた。
『誰なの……?』
「A……」
グリスは一瞬悲しそうな顔をしたけれど、すぐに背を向けて去って行った。やっぱり、どこかで会ったことがあるんだ……。
『っ……!?』
私を強烈な頭痛が襲う。頭が……痛い!私の意識はゆっくりと暗闇に落ちて行った。
「今日から原則、民間人は傷つけない……」
目を覚ますと、テレビ画面にグリスが映っていた。どうやら東都に宣戦布告しているようだ。私が寝ていたのはカフェのソファー。戦兎さんと龍我さんは東都の官邸に向かったらしい。本格的に戦争が悪化してきた……。それに、もしかしたら私、北都の人間なのかも……。
『どうして、何も思い出せないの……?』
だったら私にすべき事は何……?私に応えるようにウルフフルボトルが淡く光った。気づけば私は走り出していた。
東都のテレビ局の前。やっと辿り着いたテレビ局では龍我さんとグリス、そして三羽ガラスと戦兎さんが戦っていた。しかし、龍我さんと戦兎さんはグリスの猛攻に耐えきれず、変身を解除されてしまう。さらにあろうことかグリスは生身の戦兎を踏みつけた。
「戦兎!」
戦兎さんの身体が蹴りつけられ、ボトルが奪われる。ボロボロの戦兎さんと龍我さんはもう動けない。私だって……黙って見ていられない!
『やめて!』
「アネキ!?」
「A……お前、何でここに……」
『うわぁぁぁぁ!』
私はウルフフルボトルを握りしめてグリスを殴りつけた。でもあの時みたいにグリスにダメージを与えることが出来ない。
『私だって……!』
続けて拳を入れる。グリスは啞然として反撃はしてこなかった。何度拳をぶつけてもグリスはびくともしない。
「狼花、やめろ!」
「逃げろ!」
『私だって、何も出来ないわけじゃないの!』
勢いを付けて繰り出した右手は呆気なくグリスに掴まれた。
「……お前には無理だ」
グリスの冷たい言葉が私の心を燃え上がらせる。
『……して……』
「ん?」
『……どうして?どうして?何で何も出来ないの!?私だって、皆の役に立ちたいのに!』
私の声に応えるようにウルフフルボトルがもう一度淡い光を放つ。
「何!?」
『何で、何で……何で!』
その光はどんどん強くなって色を変え、遂にグリスを吹き飛ばした。私の手から銀色の光が漏れる。
『私にだって……出来る!』
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作者名:亜叶緒夜鳴 | 作成日時:2023年3月24日 17時