かくれんぼ ページ24
◇◇
重い扉を開き、こっそり蔵に入ると、案の定床に溜まった砂埃が小さな足袋の跡を遺し、私を誘導する。
そのまま奥まで突き進み、足跡が途絶えたと思えば、桜寿郎の鮮やかな色の着物が、物陰からチラリと覗いた。
「…ふふっ」
一生懸命息を潜めながら身を隠す我が子に、悪戯心が芽生えた私は、ひっそりと桜寿郎の背後へ回る。
「桜寿郎。使用人達を虐めるのは辞めなさい」
「っぅわ!母上!!」
声をかけた途端、目を見開いて尻もちを着いた桜寿郎は、もう見つかってしまった!と笑う。
そんな桜寿郎を見て、叱る気力が無くなってしまった私は、眉を落として思わず笑った。
「母さん、探すのは得意な方なのよ」
「…はぁ。また父上の話か」
確かに宝探しの話をしたことはあったが、また…と言われる程、桜寿郎に杏寿郎の話をした記憶はない。
そんなことより、桜寿郎に言葉遣いを改めるよう注意しようとすれば、耳にタコができてしまうなんて生意気言いながら、蔵にあった適当な段差に腰掛けていた。
「その減らず口と習った言葉をすぐ使いたがる所
桜寿郎は本当に母さん似ね。」
母親に対してこの態度の大きさとは、随分生意気に育ったものだと我ながら感心するが、人を困らせることばかりするのも、幼い頃の自分と瓜二つ。
「…なら、耳にタコができてしまったついでに
もう少しだけ昔の話を聞いて欲しいのだけれど」
ぶすっとムクれる桜寿郎に、気にせず笑って話始めれば、なんだかんだ言って桜寿郎は顔をこちらに向ける。
「ここはね、母さん達が小さい頃、
みんなで秘密基地にしていた場所なの。」
初めは杏寿郎と共に隠れ家として遊んでおり、途中からは小芭内と鏑丸も一緒に連れて、勉強の時間や稽古の時間を先延ばしにしたものだ。
「…父上は、どんな人だったのですか」
そう目を逸らしながら話す桜寿郎に、私は思わず驚いてしまう。
今まで、宇髄さんや不死川さん達については、色々なことを聞かせてくれたが、杏寿郎のことだけは、聞きも話もしてくれなかったのに。
「そうね、あの人は」
嬉しくて、すぐ話し出したところで、私はふと桜寿郎が胸に握りしめているものに気がつく。
「っ」
そして、反射的に桜寿郎の肩に触れ、その澄んだ瞳を見つめていれば、桜寿郎はばつが悪そうに紙袋を差し出した。
◇
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雫 - 涙止まらん。最高です (8月18日 23時) (レス) @page6 id: daa8a87cdb (このIDを非表示/違反報告)
(名前)(プロフ) - 初めてのコメント失礼します!メチャ号泣しました! ほんとに感動しました! (2022年3月29日 17時) (レス) @page33 id: 70da419123 (このIDを非表示/違反報告)
西川あや(プロフ) - つんつくさん» お返事遅くなってしまって申し訳ありません。暖かいコメントありがとうございます!手紙の内容については煉獄さんの性格などを色々悩んで書いたところなので、そう言っていただけるととても嬉しいです。 (2021年2月27日 21時) (レス) id: be0c2f3b60 (このIDを非表示/違反報告)
西川あや(プロフ) - みっちゃんさん» 2度も素敵なコメントありがとうございます!嬉しいコメントばかりで、物語を書くにあたって凄く励みになりました!お返事遅くなってしまって申し訳ありませんが、最後まで読んでくださり本当にありがとうございました。 (2021年2月27日 21時) (レス) id: be0c2f3b60 (このIDを非表示/違反報告)
つんつく(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます。この度は完結おめでとうございます。作品のファンになりずっと楽しみに読ませていただいてました。煉獄さんの手紙にはいつもいつも泣かされました素敵すぎです。美しくとっても素敵な作品をありがとうございました。 (2021年2月4日 15時) (レス) id: 60af00218e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:西川あや x他1人 | 作成日時:2020年11月21日 1時