感謝 ページ17
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「…不死川さんは、最近よく眠れていますか?」
鬼殺隊で活動していた時の名残から、隊士達が不眠症に悩まされるという話は、色々な人から聞いていたが、不死川さんも例外ではなく、縁側で昼寝する姿をよく見た。
「あぁ」
こちらを見ず、瞼を閉じたまま返答する不死川さん。
そんな不死川さんに、私は眠いのなら寝かせてあげようと、特にやることもないので桜寿郎の元へ行こうと地面に手を付く。
「今でも、鬼狩りをしていた時の夢をよく見る」
「…?」
突然そう話し出した不死川さんに驚き、私が勢いよく顔を向けると、先程まで閉じていた瞳は真っ直ぐこちらに向いている。
「…それは、」
辛い、悲しい、苦しい、大変?
不死川さんにとって、鬼を狩るという行為がどんなものなのか分からない私は、そこまで声に出して口を噤む。
「…」
そして、その後も何と答えれば良いか分からず、じっと不死川さんの瞳を見返していると、不死川さんは耐えられないとでも言うように、ハッと可笑しそうに笑いを零した。
「…何か面白いことでも?」
私が真剣に考えているというのに、何が可笑しいのかと眉を顰めながら返すと、不死川さんは目を細めて私を見る。
「家族の…昔の夢も、よく見るようになった」
お前らがうちに住み始めるようになってからだと、幸せを噛み締めるように優しい声色で話す不死川さんは、そっと私の頭に手を載せる。
「ありがとなァ」
「…お礼を言われることなど、
何もしておりませんけど」
今にも消えてしまいそうな程、不死川さんがあまりにも儚い笑みを向けるものだから、私は少し刺々しい言葉で不死川さんを否定する。
「…」
木漏れ日が不死川さんの銀髪を照らし、キラキラと反射する。
「…煉獄」
私の名を呼ぶ不死川さんは、私に向かってゆっくりと手を伸ばす。
ハッとして目線を合わせれば、背けたくなる程の優しい眼差しに、私は言葉を失う。
「し、な…」
そんな不死川さんに焦って口を開こうとした途端、若く無邪気な声が私たちの元へ届く。
「はほうえ!!」
みてくださいと、嬉しそうに笑顔を浮かべる桜寿郎に、小さく笑いを零して手元を覗けば、ほとんど桜寿郎の拳と同じ大きさの、立派なカブト虫だった。
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雫 - 涙止まらん。最高です (8月18日 23時) (レス) @page6 id: daa8a87cdb (このIDを非表示/違反報告)
(名前)(プロフ) - 初めてのコメント失礼します!メチャ号泣しました! ほんとに感動しました! (2022年3月29日 17時) (レス) @page33 id: 70da419123 (このIDを非表示/違反報告)
西川あや(プロフ) - つんつくさん» お返事遅くなってしまって申し訳ありません。暖かいコメントありがとうございます!手紙の内容については煉獄さんの性格などを色々悩んで書いたところなので、そう言っていただけるととても嬉しいです。 (2021年2月27日 21時) (レス) id: be0c2f3b60 (このIDを非表示/違反報告)
西川あや(プロフ) - みっちゃんさん» 2度も素敵なコメントありがとうございます!嬉しいコメントばかりで、物語を書くにあたって凄く励みになりました!お返事遅くなってしまって申し訳ありませんが、最後まで読んでくださり本当にありがとうございました。 (2021年2月27日 21時) (レス) id: be0c2f3b60 (このIDを非表示/違反報告)
つんつく(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます。この度は完結おめでとうございます。作品のファンになりずっと楽しみに読ませていただいてました。煉獄さんの手紙にはいつもいつも泣かされました素敵すぎです。美しくとっても素敵な作品をありがとうございました。 (2021年2月4日 15時) (レス) id: 60af00218e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:西川あや x他1人 | 作成日時:2020年11月21日 1時