散策 ページ16
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「おら、さっさと来い」
照れ臭そうに目を逸らしながら、勲章ともいえる傷だらけの手を私に向ける不死川さん。
そんな不死川に、私は訳が分からず、数秒間その差し出された手をじっと見つめる。
「…」
まさか、以前、走ることや運動が苦手だと話したから、私を気遣ってくれているのだろうか…？
…いや。
その話をしたのも随分前だし、そんなどうでもいい話なんて、覚えている訳がないじゃない。
そんな思考を数度繰り返していると、不死川さんは痺れを切らしたように溜息をつき、私の手を強い力で引く。
「あっあの…不死川さ」
深く息を吸って吐くのを繰り返す不死川さんに、昔の杏寿郎との嫌な思い出を思い出した私は、桜寿郎が楽しそうに早く早くと不死川さんを捲し立てるのを見て、一気に血の気が引いていくのを感じる。
「っきゃぁ」
「あははー！」
私の嫌な予感は見事に的中し、不死川さんは私の手を引いたまま、人間とは思えないほどの速さで道を駆け抜けた。
◇
「しっ不死川さん、止まって！」
何度も足が縺れる中、ほぼ浮いた状態で必死に不死川さんに懇願すると、こんなものまだまだ序の口だと、焦る私を見て口元に笑みを浮かべる。
「なんだ、煉獄の嫁の癖にこんなもんかィ」
「関係…っないです！」
◇
そんなこんなで腕を引かれること数分後。
汗一つ流さず、涼しい顔で規則正しい呼吸をゆっくりと繰り返す不死川さんは、陽の光から逃れるように木の影に入る。
「…無理はいけないと言っているでしょう」
「ハッ、こんなの無理のうちにも入らねぇよ」
草原で一人駆け回る桜寿郎を横目に、普段よりキツい口調で責めれば、不死川さんは私の心配を鼻で笑い飛ばす。
そんな不死川さんを不満に思いながら、草の上で胡座をかく不死川さんの隣に、私は無言で腰を下ろす。
「…勉強は順調か」
そう先に沈黙を破った不死川さんに、私は真面目な顔で強く頷く。
「来年までには試験を受けに行けそうです」
まだまだ今の段階では断言できませんがと、保険をかけるつもりでは無いが、曖昧な言い方で付け加えれば、不死川さんはお前なら大丈夫だろと笑い飛ばす。
そして、眠そうに目を擦り、草原に仰向けで寝転がったまま瞼を閉じた。
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雫 - 涙止まらん。最高です (8月18日 23時) (
レス) @page6 id: daa8a87cdb (このIDを非表示/違反報告)
(名前)(プロフ) - 初めてのコメント失礼します！メチャ号泣しました！ ほんとに感動しました！ (2022年3月29日 17時) (レス) @page33 id: 70da419123 (このIDを非表示/違反報告)
西川あや(プロフ) - つんつくさん» お返事遅くなってしまって申し訳ありません。暖かいコメントありがとうございます！手紙の内容については煉獄さんの性格などを色々悩んで書いたところなので、そう言っていただけるととても嬉しいです。 (2021年2月27日 21時) (レス) id: be0c2f3b60 (このIDを非表示/違反報告)
西川あや(プロフ) - みっちゃんさん» 2度も素敵なコメントありがとうございます！嬉しいコメントばかりで、物語を書くにあたって凄く励みになりました！お返事遅くなってしまって申し訳ありませんが、最後まで読んでくださり本当にありがとうございました。 (2021年2月27日 21時) (レス) id: be0c2f3b60 (このIDを非表示/違反報告)
つんつく(プロフ) - 初めてコメントさせていただきます。この度は完結おめでとうございます。作品のファンになりずっと楽しみに読ませていただいてました。煉獄さんの手紙にはいつもいつも泣かされました素敵すぎです。美しくとっても素敵な作品をありがとうございました。 (2021年2月4日 15時) (レス) id: 60af00218e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：西川あや x他1人 | 作成日時：2020年11月21日 1時
