検索窓
今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:52,732 hit

ページ23

病室の扉を開けようと取っ手に手を伸ばすと、無意識に手が震えた。
怖い。今開けてAが息を引き取っていたらどうしよう。御両親になんて声かければいい?俺はどんな反応すればいい?もうわからない。ぐちゃぐちゃになってきた。

「モトキ…くん?」
「あっ……Aの、お母さん」

迷っていた俺に声をかけてくれたのはAのお母さんだった。お母さんさんは瞼を腫らして、ハンカチを手に持っていた。

「(てことは、やっぱり…)」

最悪の事態が頭の中を支配した。俺は冷静に聞いた。

「あの、名前は…」
「ええ、先ほど先生が来てくれて…なんとかなってる状態でね……」
「そうですか…」

なんとかなってる状態でも、生きているという安心感があった。まだ助かるかもしれないという余地があるということ。まだ生きてる。

「そばにいてあげてほしいの」
「え?」
「Aね、緊急処置されているとき、モトキくんに会いたい…呼んできて…って、ずっと言ってたから」

泣きそうになるのを堪え、お母さんを見つめた。

「俺でよければ、そばにいさせてください」
「モトキくんだからいいのよ…お願いね」

お母さんはハンカチで目元を拭い、廊下を歩いていった。

「……ふぅ」

病室の扉を開け、ゆっくり足を踏み入れた。足が震えるのがわかった。

「A…」

名前を呼んで目を開けてくれるのは、アニメだけなんだろうか。よく見る、あの感動的なシーン。

『………もとき、』
「…!!Aっ」
『きてくれたんだ…うれしい』
「当たり前でしょ!だって…!」

自分の頬に伸びる手は白くて細い。その手をぎゅっと掴むと、Aは弱々しく微笑んだ。儚かった。愛おしかった。

『ごめん、ユーフェス、行けそうにないや…』
「いいよ別に、今は自分の事だけ考えないと…」
『いきたかったのになあ』

その言葉に、どんな意味が込められているのか俺には分からなかった。
行きたかった、生きたかった…どちらにせよ、聞いただけで辛かった。

『アニメみたい』
「アニメ…」
『うん。すごいでしょ、起きたよ、私。モトキの声で…ありがとう』
「ううん…頑張ったのは、Aだよ」

そう言うと、いつもの笑みを見せたA。その目には少し涙が溜まっていた。

『ねえ…モトキ…?』
「ん?」
『私を、好きでいてくれてありがとう…本当に…ごめん……』
「……」

4→←2



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.6/10 (22 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
102人がお気に入り
設定タグ:YouTuber , 短編集 , 悲恋
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

あやもち(新アカウント)(プロフ) - リンさん» ちょっと違う気がしますがありがとうございました! (2018年1月20日 22時) (レス) id: c7791dfc52 (このIDを非表示/違反報告)
リン - ありがとうございました。面白かったです。 (2018年1月20日 22時) (レス) id: da57983ead (このIDを非表示/違反報告)
未来(プロフ) - ありがとうございます!! (2018年1月20日 21時) (レス) id: 3b3f15d52b (このIDを非表示/違反報告)
あやもち(新アカウント)(プロフ) - 未来さん» 了解です! (2018年1月20日 21時) (レス) id: c7791dfc52 (このIDを非表示/違反報告)
未来(プロフ) - りょうくんとイチャイチャするシチュエーションってお願いできますか?? (2018年1月20日 21時) (レス) id: 3b3f15d52b (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:あやもち(新アカウント) | 作者ホームページ:https://twitter.com/avntis_TO_mizu  
作成日時:2017年11月17日 14時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。