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病室の扉を開けようと取っ手に手を伸ばすと、無意識に手が震えた。
怖い。今開けてAが息を引き取っていたらどうしよう。御両親になんて声かければいい?俺はどんな反応すればいい?もうわからない。ぐちゃぐちゃになってきた。
「モトキ…くん?」
「あっ……Aの、お母さん」
迷っていた俺に声をかけてくれたのはAのお母さんだった。お母さんさんは瞼を腫らして、ハンカチを手に持っていた。
「(てことは、やっぱり…)」
最悪の事態が頭の中を支配した。俺は冷静に聞いた。
「あの、名前は…」
「ええ、先ほど先生が来てくれて…なんとかなってる状態でね……」
「そうですか…」
なんとかなってる状態でも、生きているという安心感があった。まだ助かるかもしれないという余地があるということ。まだ生きてる。
「そばにいてあげてほしいの」
「え?」
「Aね、緊急処置されているとき、モトキくんに会いたい…呼んできて…って、ずっと言ってたから」
泣きそうになるのを堪え、お母さんを見つめた。
「俺でよければ、そばにいさせてください」
「モトキくんだからいいのよ…お願いね」
お母さんはハンカチで目元を拭い、廊下を歩いていった。
「……ふぅ」
病室の扉を開け、ゆっくり足を踏み入れた。足が震えるのがわかった。
「A…」
名前を呼んで目を開けてくれるのは、アニメだけなんだろうか。よく見る、あの感動的なシーン。
『………もとき、』
「…!!Aっ」
『きてくれたんだ…うれしい』
「当たり前でしょ!だって…!」
自分の頬に伸びる手は白くて細い。その手をぎゅっと掴むと、Aは弱々しく微笑んだ。儚かった。愛おしかった。
『ごめん、ユーフェス、行けそうにないや…』
「いいよ別に、今は自分の事だけ考えないと…」
『いきたかったのになあ』
その言葉に、どんな意味が込められているのか俺には分からなかった。
行きたかった、生きたかった…どちらにせよ、聞いただけで辛かった。
『アニメみたい』
「アニメ…」
『うん。すごいでしょ、起きたよ、私。モトキの声で…ありがとう』
「ううん…頑張ったのは、Aだよ」
そう言うと、いつもの笑みを見せたA。その目には少し涙が溜まっていた。
『ねえ…モトキ…?』
「ん?」
『私を、好きでいてくれてありがとう…本当に…ごめん……』
「……」
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あやもち(新アカウント)(プロフ) - リンさん» ちょっと違う気がしますがありがとうございました! (2018年1月20日 22時) (レス) id: c7791dfc52 (このIDを非表示/違反報告)
リン - ありがとうございました。面白かったです。 (2018年1月20日 22時) (レス) id: da57983ead (このIDを非表示/違反報告)
未来(プロフ) - ありがとうございます!! (2018年1月20日 21時) (レス) id: 3b3f15d52b (このIDを非表示/違反報告)
あやもち(新アカウント)(プロフ) - 未来さん» 了解です! (2018年1月20日 21時) (レス) id: c7791dfc52 (このIDを非表示/違反報告)
未来(プロフ) - りょうくんとイチャイチャするシチュエーションってお願いできますか?? (2018年1月20日 21時) (レス) id: 3b3f15d52b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あやもち(新アカウント) | 作者ホームページ:https://twitter.com/avntis_TO_mizu
作成日時:2017年11月17日 14時