38 備忘録 ページ39
私は忘れることが多い、厳密には意識して忘れることが多い、らしい。
其れを言われたのは初めての接物の時だっただろうか、それとも初めてお酒を飲んだときだっただろうか。
元最年少幹部に先に言われたのか、面倒見の良い下っ端構成員に先に言われたのかは覚えていないが。
どうやったら忘れないの？と私は無邪気に下っ端構成員の彼に聞いた。彼は少し考え込んで、私の手に小さなメモ帳を乗せる。兎のイラストが描かれた、子供らしいものだった。
「忘れたくないことを、書いておけばいい。」
備忘録を貰っていた。それすら忘れていた。私の頭から織田作之助という人物は消えてしまっていた、何度かお世話になったのに。
本当に最低な人間だ、死んだ奴はすぐに忘れてしまうんだから。
彼を思い出して、連鎖的に備忘録に書いた内容を思い出す。部分部分の、覚えていることだけだけれども。
ーーーおばあちゃんがきらい。
ーーーお母さんはすごい人。お父さんもすごい人。
ーーーおばあちゃんはいらない。
ーーーお父さんとお母さんと家族でいたい。
嫌だ、とても気分が悪い。思い出してしまう、思い出したくないのに。今まで寸前で止まってきたというのに。
脳みそを貫いて記憶の再生を強制的に止めたかった、口の中が乾いて唇を噛み締めていた。視界がくらくらして足がおぼつかなくなった。目の前のお婆さんを殺したくなった。
「あんた、大丈夫かい？」
五月蠅さい死ね、と言いかて言葉をぐっと飲み込む。此のお婆さんはあの老害と同一人物ではないのだ、当たり散らすのは筋違いだ。
「大丈夫ですよゥ。」
思い出していく、昔のことを思い出していく。気にも止めなかった日々が、わざと見ないふりをしていた日々の意味がなくなっていく。
思い出すなと願うけれど、思い出していく。
そう言えば所長の部下のナースさん(名前忘れた)は記憶を見る能力だった。と言う事は彼女は私の過去を知っているのだろう、私の忘れた私を知ったのだろう。
気持ち悪い。
(私のことは、私だけが知っていれば、いいのに。)
矢張り次会ったら殺すべきだろうか？と考え首を振る。最優先はあちらに帰ることーーーどうして帰りたいか。
どうして、帰りたいか。
胸が締め付けられる。記憶が、思い出が、色褪せながら浮かび上がる。なぜだかとても体が痛い。とても。痛い。
「・・・あ。」
ふと、自分の目から冷たい何かが出ていることに気づいた私は隠すようにそれを拭った。
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アヤ(プロフ) - ペンギン太郎さん» ありがとうございます！平ちゃん可愛い、久々に言われました…！無理せずしっかり頑張ります！ (2018年12月27日 18時) (
レス) id: 16b8101627 (このIDを非表示/違反報告)
ペンギン太郎 - すごい！この作品！とても好き！すんごく面白いです！！中也さんがかっこよくって平ちゃんが可愛くて…もう…もう！応援してます！無理しないで頑張ってください！ (2018年12月27日 17時) (レス) id: a451b06430 (このIDを非表示/違反報告)
アヤ(プロフ) - ヒバリさん» ありがとうございます！かっこいいと言っていただけると安心します…かっこよくかけてるか不安になるんですよねー。これからも更新頑張ります！ (2018年12月23日 20時) (レス) id: 16b8101627 (このIDを非表示/違反報告)
ヒバリ - ちゅーやさんちょっとイケメンすぎやしません？アヤさんのちゅーやさんかっこいいです！これからも更新楽しみにしてまふ。 (2018年12月23日 14時) (レス) id: 60878f7a2d (このIDを非表示/違反報告)
アヤ(プロフ) - 本の虫さん» ありがとうございます！完全な個人のプライベートで番外編やってすいません、これからも頑張ります！ (2018年11月6日 0時) (レス) id: 16b8101627 (このIDを非表示/違反報告)
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