34 善意の押し売り ページ35
人でごった返すショッピングモール内を、警戒しながら歩く。あと十分もすればモール内の避難が開始されるだろう。そうなると、死柄木・・・手の人を見つけるのは難しい。
「居ますかねェ。」
「居ないだろうな、ワープで帰っただろ。」
と言いつつ周りを警戒するのを緩めないのは其の油断で失敗するのを防ぐ為だ。もしもはいつでも起こるし。
「おい、手前ェ歩きながらでいいから聞け。」
その高圧的な中原くんの物言いにむっとし、私は愚痴をこぼす。
「なァんですかァ、童貞チビ。」
「手前ェから張っ倒してやろうか？」
ガチトォンだったためやはり丁重にお断りさせていただいた。
なにはともあれ、私はふと中原くんの顔を見る。相も変わらず鋭い目付きと眉間のシワは治っていない、そう言う顔をしているから本来ならば可愛い系である筈なのに近寄りたくないやばいちび認定されるのだ。
「で、何なんです。」
いつもの口調で、いつもの軽口で。どうせ大したことではないと思っては私は中原くんに溜息混じりに聞いてーーー
「手前ェ、本当にポートマフィアに戻るつもりか？」
少し、間を開けて私は答えた。
「戻りますけど、何でそんなこと」
「何の為だ。」
何の為、と問われて私は言葉に詰まる。だって私はポートマフィアの犯罪者だから。戻らないと、帰って仕事しないといけない。それが答えなのに、喉奥に突っかかって出てこない。
「・・・手前ェが何でポートマフィアにいるのかずっと不思議だった。孤児が拾われる、なんてのはザラだしある程度の忠誠心は芽生える。それが無いやつは、大抵途中で逃げていく。
手前ェは忠誠心が全くない癖に、逃げるつもりがない。」
そりゃァ確かに忠誠心なんてないけれど、と軽く答えようとしても何故か口に出せなくて。少しだけ汗ばんだ手を握り締める。
「駄目なんですか。」
何を言っているのか自分でもとっさに分からなかった。
「折角、貰った居場所なんですよ。私もう捨てられたくないし捨てたくないんですよ、大切な大切な新しい居場所なんです。」
捨てられたくないし、捨てたくないと。そう私は繰り返して。
「居場所は、此処にもあンだろ。」
「・・・そういう事じゃ、ない。」
と思います、と後半につれて私の声は小さくなっていく。確かにヒーローになって偽善者をやることも、此方に残って敵になることもできる。
けれど私はそれを拒絶する。はっきりした理由が言えないまま。
何かを。忘れている気がした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 330人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アヤ(プロフ) - ペンギン太郎さん» ありがとうございます！平ちゃん可愛い、久々に言われました…！無理せずしっかり頑張ります！ (2018年12月27日 18時) (
レス) id: 16b8101627 (このIDを非表示/違反報告)
ペンギン太郎 - すごい！この作品！とても好き！すんごく面白いです！！中也さんがかっこよくって平ちゃんが可愛くて…もう…もう！応援してます！無理しないで頑張ってください！ (2018年12月27日 17時) (レス) id: a451b06430 (このIDを非表示/違反報告)
アヤ(プロフ) - ヒバリさん» ありがとうございます！かっこいいと言っていただけると安心します…かっこよくかけてるか不安になるんですよねー。これからも更新頑張ります！ (2018年12月23日 20時) (レス) id: 16b8101627 (このIDを非表示/違反報告)
ヒバリ - ちゅーやさんちょっとイケメンすぎやしません？アヤさんのちゅーやさんかっこいいです！これからも更新楽しみにしてまふ。 (2018年12月23日 14時) (レス) id: 60878f7a2d (このIDを非表示/違反報告)
アヤ(プロフ) - 本の虫さん» ありがとうございます！完全な個人のプライベートで番外編やってすいません、これからも頑張ります！ (2018年11月6日 0時) (レス) id: 16b8101627 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
