写真家と学者のはなし ページ28
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『写真!撮らせて頂けませんか!』
僕のネクタイピンを取ろうとするテディと格闘していると、突然ガバッと頭を下げられた。
直角に曲げられた腰に、ビシィッと突き出された両手には、近年発明されたという手持ちのカメラ。まさかそんな貴重なものを既に持っている人がいるなんて。
「え、ええっと、」
『ぁ、怪しい者じゃないんです!』
戸惑う僕に、その女性はわたわたと綺麗な黒髪を振り乱し『私こういうものでして、』と四角い厚紙を手渡す。
思わず勢いで受け取ってしまったそれには、彼女がニコニコと笑ってこちらに手を振る写真と、名前に連絡先等々が書かれていた。どうやら名刺のようだ。
久々に、いや女性からは初めて貰った名刺をまじまじと眺める。
A・コミ…コミナト?珍しいファミリーネームだ。異国から来たのか、はたまたダブルなのか。
…ふぅん、まほうどうぶつしゃしんか………魔法動物写真家!?
『おたくのニフラーちゃん、とっても艶々な毛並みで、ご主人ともすごく仲良しそうで素敵だなって…ぁ、もちろんお礼はします!』
『お願いします!』とまたしても直角のおじきを披露するコミナトさんに、いい加減周りの目が気になってきて、「…いい、ですよ」と返事をしてしまった。
途端に頭を上げて、僕のトランクを持ってない方の手をぎゅうっと握りしめたコミナトさんの黒い瞳はキラキラと輝いている。
『ありがとうございます!!!…因みにご主人のお名前をお聞きしても?』
「あぁ…ニュート・スキャマンダー、です」
『スキャマンダーさん!宜しくお願いします!』
そう心底嬉しそうに笑った彼女は、またぺこりと90度のおじきを披露した。
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コミナトさんを僕のトランクに案内すると、それはそれは子供のように大興奮し、シャッターを切りまくっていた。フィルムが無駄にならないかと心配していたのだが、無駄なんて言葉は失礼なくらい全ての写真が素晴らしいものだった。
モノクロなのに、まるで色がついているように生き生きとした動物たちが動き回っている。
『さぁニフラーちゃん、これなーんだ?』
コミナトさんがピカピカに磨かれたガリオン硬貨をテディに見せれば、途端にヤツは目の色を変える。その瞬間も見逃すことなくシャッターを切った。
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木菟(プロフ) - まいまいさん» ほんとですか…!!ほっとしました…もしよろしければ続編の方もご愛読下さると嬉しいです!ありがとうございました! (2022年5月19日 22時) (レス) id: 2546c4f173 (このIDを非表示/違反報告)
まいまい(プロフ) - ありがとうございます!すごく素敵で良かったですˊᵕˋ♡ (2022年5月15日 15時) (レス) id: 2c18e857c2 (このIDを非表示/違反報告)
木菟(プロフ) - kikuchi51さん» kikuchi51様、コメント、ご愛読ありがとうございます!!勿体無いお言葉です…ありがとうございます……!!!アンケートを作成しましたので、是非ご投票お願い致します! (2022年5月15日 14時) (レス) id: 2546c4f173 (このIDを非表示/違反報告)
木菟(プロフ) - まいまいさん» お待たせしましたー!ぐだぐだした終わり方で申し訳ない……リクエストありがとうございました! (2022年5月15日 14時) (レス) id: 2546c4f173 (このIDを非表示/違反報告)
木菟(プロフ) - ムスメ3さん» ありがとうございますー!ぐだぐだしたプロポーズが彼らしいかななんて……原作ではどうティナちゃんとくっつくのか楽しみです! (2022年5月15日 14時) (レス) id: 2546c4f173 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:木菟 | 作成日時:2022年4月23日 20時