Q.大人の定義 ページ11
**
僕のファーストキスは、小さな女の子だった。…あ、いや、決して僕が幼女趣味とかではなくて。
当時僕は、ホグワーツに通う学生だった。
フクロウ便で実家の隣に闇祓いの一家が越してきたと伝えられ、便箋の中に入っていたその一家であろう写真。
見た感じ6歳くらいだろうか。幼児特有の柔らかそうな頬っぺたを膨らませて、父親と思しき男性と手を繋いで写る女の子。写真の中でずっと母親っぽい女性にあやされているけれど、一向に機嫌が良くなる兆しはない。
実際に会ったこともないくせに、下の兄弟がいないからか妙にその子を気にしながら時は過ぎ、夏休み休暇になった僕は冬休み振りに自宅へ帰ってきた。
イースターは帰らずに魔法動物の世話をしていたけれど、夏休みは帰ってこいと母親から手紙があったのだ。
9と3/4番線を抜けて、駅の開けた場所へ出るとすぐに両親と兄を発見する。
よく全員休暇が取れたものだと歩を進めていると、母の足元に立つ小さな女の子が視界に入った。
あの写真の女の子だと確信する。
「ニュート。おかえりなさい」
「変わりはないか、ニュート」
「あぁ、うん、まぁ…」
目の前にやってきた両親とテセウスへ適当な返事を返しながらも、僕をじーっと見つめるニフラーみたいな瞳から目を離せない。
そのことに気付いた母親は嬉しそうに女の子を抱き上げる。途端に視線が近くなった。
「A、ニュートが気に入った？」
「A…？」
「そうよ。例のお隣さん」
母親が僕に自身を紹介していても、女の子の視線は僕からどうしてだか全くもって離れない。黒くて真っ直ぐで純粋無垢な瞳に段々と居た堪れなくなって、(動物に対しては絶対やっちゃダメだけど)そっと視線を逸らす。
いや、逸らそうと思った。
ぐい、と落ちるかどうかも考えず母の腕から身を乗り出したAが、小さく柔らかい両手で僕の両頬を掴んだからだ。むぎゅ、と唇が鶏みたいに飛び出す。
Aを抱える母の驚いた声が聞こえる。
そんなことお構い無しに、逃げ場を失った僕を穴が開くほど見つめた彼女は、あろうことか、僕の飛び出た唇にちゅ、と可愛いキスを落としたのである。
Aの真後ろにいて見ていなかった母と、ばっちり目撃してしまった父、テセウス、そして当事者の僕との温度差がすごい。
ようやく手を離したA本人は、にこにことご機嫌に笑っていた。
**
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 201人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
木菟(プロフ) - まいまいさん» ほんとですか…!!ほっとしました…もしよろしければ続編の方もご愛読下さると嬉しいです！ありがとうございました！ (2022年5月19日 22時) (
レス) id: 2546c4f173 (このIDを非表示/違反報告)
まいまい(プロフ) - ありがとうございます！すごく素敵で良かったですˊᵕˋ♡ (2022年5月15日 15時) (レス) id: 2c18e857c2 (このIDを非表示/違反報告)
木菟(プロフ) - kikuchi51さん» kikuchi51様、コメント、ご愛読ありがとうございます！！勿体無いお言葉です…ありがとうございます……!!!アンケートを作成しましたので、是非ご投票お願い致します！ (2022年5月15日 14時) (レス) id: 2546c4f173 (このIDを非表示/違反報告)
木菟(プロフ) - まいまいさん» お待たせしましたー！ぐだぐだした終わり方で申し訳ない……リクエストありがとうございました！ (2022年5月15日 14時) (レス) id: 2546c4f173 (このIDを非表示/違反報告)
木菟(プロフ) - ムスメ3さん» ありがとうございますー！ぐだぐだしたプロポーズが彼らしいかななんて……原作ではどうティナちゃんとくっつくのか楽しみです！ (2022年5月15日 14時) (レス) id: 2546c4f173 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：木菟 | 作成日時：2022年4月23日 20時
