story29 罰則面 ページ31
陽毬side
古い木でできた椅子がきしりと音を上げる。何を考えているのか分からない冷たい瞳でこちらを見つめるペルソナが立ち上がって、僕の手を拘束する縄を腐食させて解く。支えを失ってぐらりと傾く僕の身体を片腕で支えてからペルソナは、自身が先ほどまで座っていた椅子に僕を座らせた。
彼は動く気力も体力も残されていない僕を上から見下ろしてから、おもむろに制御アイテムを取り出して僕の身体に付けていく。
「……今日一日はコレを付けて過ごせ。授業が終わったら外してやる。」
そして最後に白猫を催した仮面を僕に被せてから、ガチャリと地下牢の扉を開けた。
仮面を付けられた瞬間から、ズキズキと頭が鳴り出し、ただでさえ消耗した身体は不調を訴えて来る。けれど今日ばかりは、授業をサボるのも自室に閉じこもって休むのも『あの方』は許してくれない。
身体に鞭打ってなんとか奮い立たせ、不確かな足取りのまま地上へと出る。ある事情で授業に遅れる時、いつもは教室近くまでついてきてくれるペルソナがいないから一人で教室まで歩いた。
相変わらず騒がしい教室の扉を開けると、みんなの視線が一気にこちらに集まる。ひとつ間をおいて、ざわりと教室が湧いた。
「陽毬っ!」
流架が慌てた表情で立ち上がり、不安げな声で僕の名を叫ぶ。彼の隣で同じように立ち上がり、後悔に歪んだ顔でこちらを見つめる棗と目があった。
「陽毬ちゃん、本当に彼のとこに行ったんだね。随分酷くやられたもんだ。」
「覚悟して行ったし。……遅刻してでもきたんだから説教はナシだよ。」
クラス中の視線を浴びながら自分の席に向かう時、珍しく教室にいたナルとすれ違う。お互い立ち止まって周りには聞こえないような小さな声で会話を交わす。
ニコニコと笑顔を貼り付けた彼は、その顔に似合わぬ声のトーンで話しているのを聞く限り、少し落ち込んでいるようだった。
普段なら笑って声をかけて彼を励ましているところだが今は自分のことで精一杯だった。早く椅子に座って身体だけでも休めたかった。
「ねーねー陽毬さん、きいてー!」
「うっさい。今話しかけないで。」
だからいつもは軽くあしらうパーマの言葉に冷たい言葉をぶつけてしまう。好んで人を傷つけたいわけではないのにそんな行動をしてしまうほど、心に余裕がなかった。
「陽毬……大丈夫?」
席に着くと不安げに見つめて来る流架。余裕のない僕は、その言葉にただ頷くことしかできなかった。
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えるふぃ(プロフ) - やしろさん» へぇー、結構占ツク徘徊してたんだ!笑 あー、夢小説漁っちゃうのわかる!私の場合、漁ってる途中にむずむずしてなんか話書きたくなるんだけど…笑笑 やしろの期待に添えるような話が書けてるといいなぁ(*´ω`*) (2018年9月14日 0時) (レス) id: 2df896d132 (このIDを非表示/違反報告)
やしろ(プロフ) - えるふぃさん» お久しぶり…!と言っても実は結構な頻度で占ツクにはいるんだ〜!読み専と化してる(笑) けど根っからの夢女子だから新ジャンル行っても必ず夢小説漁ってるからホントここにはお世話になりっぱなしです!学アリ熱は周期的にくるから、よく読んでるよ!! (2018年9月13日 18時) (レス) id: ec62b59ee0 (このIDを非表示/違反報告)
えるふぃ(プロフ) - やしろさん» わぁ、やしろお久しぶりね!修正版の方読んでくれてて嬉しい!しばらく連絡取れなかったから、もう読んでくれてないと思ってた…笑 自分で書きながら棗や夢主みて悲しくなったりしてるから重症だよね(*´ω`*) また更新するね!見てくれてありがとう(*´ω`*) (2018年9月12日 15時) (レス) id: 2df896d132 (このIDを非表示/違反報告)
やしろ(プロフ) - えるふぃ、お久しぶりです!修正版「君と一緒に」もちょこちょこ読ませて頂いてました!夢主ちゃんや棗の優しさが格段に分かりやすく伝わってきて、もうホント好き!って感じ……!これからどんどん修正版の更新がされてくのを待ってます! (2018年9月11日 20時) (レス) id: ec62b59ee0 (このIDを非表示/違反報告)
えるふぃ(プロフ) - 波音さん» そう言っていただけると頑張って修正したかいがあります!褒めていただけると一気に疲れが吹き飛びますね笑 最近更新できていなかったのですがまた近々更新してみようと思います!ありがとうございます(*´ω`*) (2018年8月3日 3時) (レス) id: 2df896d132 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:えるふぃ | 作成日時:2013年11月22日 7時