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156.君、誘う ページ6

 湯浴みを終えると、

 台所で夕餉の準備をしているAのところへと向かった。


「もう出られたのですね!

 夕餉もう少しですから待っていてください。」



「分かった!楽しみに待っている!!」


 
 彼女が手を洗おうと

 水道の蛇口に手をかけようとした時、

 俺は後ろから彼女を抱きしめた。


 柔らかくて、温かくて、安心するぬくもり。



「…杏寿郎さん?」


 Aの綺麗な声がすぐそばで聞こえる。


 彼女のうなじのあたりに鼻をつけると、

 すんっと匂いを嗅いだ。


「…いい匂いがする。」



「…くすぐったいです。

 手を…洗わせてください。」

 
 彼女の身体に回した腕にさらに力を込めた。

 

 …落ち着く。

 
「あと10秒だけ待ってくれないか…?」


「…じゃあ、あと10秒だけ。」


 

 誘いたい。


 迷い、乱れた心の中。


 …Aと花火が見られたのなら、もう何もいらない。




「俺が数えよう!



 1…2…3…4…5…6…7…8…9………」




 A。

 それでも君を前にすると、どうも離れることができない。

 愛しくて、好きで…大好きで…



「きょ…」



「…来週の土曜日の夜、

 予定を空けておいてくれないか?」


「わ、分かりました。」


 彼女は戸惑い気味に返事をした。



「一緒に花火大会へ行こう。」



 驚いたAは、顔を後ろに向けた。

 その表情は嬉しそうで、

 そんな彼女をいつまでも見ていたいと思った。


「…10」


 俺はそう言うと抱きしめていた腕を離す。

 すると、振り返った彼女は満面の笑みで応えた。


「私も…!誘おうと思っていました。

 嬉しいです!楽しみにしていますね!」



「うむ。」


 嬉々としながら夕餉作りを再開するAを見ていると、

 このありふれた光景がどれほど幸せなものなのかと

 胸がいっぱいになった。



 小野寺のことを思うと、"明日は我が身ぞ"

 そんな言葉が浮かんできてしまう。



 いけない。

 ならば、限りある生を君のそばにいても良いのだろうか。


 しかし、彼女の悲しむ顔を想像するだけで

 胸が張り裂けそうになる。





 俺の心は隙間風にゆらゆら揺れる蝋燭の灯火のよう。





 いつだって、心に願うのは君の幸せ…






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 2022.9.17 狐姫

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設定タグ:煉獄杏寿郎 , 鬼滅の刃 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
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狐姫(プロフ) - 美桜さん» ありがとうございます♡ いつもコメントくださり、本当励みになります!これからの煉獄さんサイドの展開もお楽しみくださいね! (2023年2月3日 22時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - こんばんは。お疲れ様です☺︎すみません。私が早とちりしてしまいました。続きドキドキしますが楽しみにしてます。完結まで見守っていきますね!新作もその時はぜひ拝読させて頂きますね♪ (2023年1月25日 22時) (レス) @page50 id: 4bde5e03bb (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - 美桜さん» 美桜さん、ありがとうございます♡ 私の書き方が悪くてすみませんが、続編はなく完結いたします!次に移行するという意味でした…!ただ、まだ確定ではありませんが、新作を少しずつ考えていますので…いつかお知らせできるといいです💭 (2023年1月24日 19時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - 更新お疲れ様です!いよいよ完結ですね。最後まで2人の物語を見守っていきます。続編もあるとのことでそちらも楽しみにしてますね☘ (2023年1月23日 22時) (レス) @page49 id: 4bde5e03bb (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - 美桜さん» 美桜さん!コメントありがとうございます。こちらこそ、本年もよろしくお願いいたします!更新を待ってくださる方が一人でもいてくださることが本当に幸せです。これからも、ときめく物語をお届けしていきますね! (2023年1月6日 22時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:狐姫 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/kohime_yume  
作成日時:2022年9月6日 22時

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