いつもの事 ページ3
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『___!!』
悲鳴にも似たその声で、私は我に返ったかのようにガバっと布団から起き上がる。その時、ツゥと私の頰を一筋の水滴が濡らしていった。訳も分からずこの夢を見、そして涙する。それが私の一日の始まりにもなっていた。
「(また、この夢…)」
ほぼ毎日この夢を見ている。が、最後の言葉はうまく聞き取れた事がない。いつもこの声が聞けそうで聞けないところで目が覚める。どこかもどかしさを感じながら洗面所へと向かう為、ベッドから足を出した。
「…あ」
「……」
部屋を出てすぐ、薄暗い戦艦の廊下から一つの影が見えた。その影はこちらへと歩を進めている。私の小さい呟きに気付いたのか、一度歩くのを躊躇うかのように立ち止まり、でもまたすぐに歩き出した。
ーー晋助だ。
徐々に近付いて来る影がようやくはっきり見えた頃、その影が晋助である事に気付く。少々気まずさもあったが、挨拶くらいはと思い小さく息を吸う。
「おはよう。…晋助、」
「……」
控えめに挨拶をすると、晋助はすれ違いざまに横目で私を見た後、すぐに逸らした。そしてそのまま何の言葉も残さずに暗い戦艦へ消えて行った。
「(まぁ、いつもの事だし)」
自分にいつもの事だと言い聞かせ、落ち込んだ気分をなくすべく、頰をパチンと叩き晋助とは逆の方向へ爪先を向けた。
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黒猫 - 続きは書かないんですか? (2018年8月14日 14時) (レス) id: 68a25adb45 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:春雨 | 作成日時:2018年5月13日 10時