あやかし少年少女物語第十部ー廻る因果篇ー〈イナGo〉 (ページ22)

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第二十二話 11 ページ22

……こんな体勢だというのに、結季はボクに優しく微笑んだ

結季「……フェイは、皆と同じくらい好きってだけじゃ、嫌なんだね」
フェイ「……うん」
結季「……でも、ごめんね
わたしはフェイのこと、皆と違うようには見られない……確かに居なくなったら寂しいけど、多分仲間以上にもそれ以下にも見られない
大切な人達に、順位付けなんて出来ないよ」
フェイ「……」
結季「でも……フェイがそれが嫌なら、フェイが納得するようにすればいい
フェイが望むように……フェイがわたしの特別になれるのなら
大丈夫、フェイが何をしても、嫌いになったり拒絶したりしないから」

ーーーまだ中学生で、人一倍無垢な彼女が、この体勢からボクのしようとしていることを理解しているかは分からない
ただ、強引にでもボクを特別だと刻み込むことになる手段だと、薄々気付いているのだろう
ーーーその結果、自らを傷付けることになるとも

ーーーそう、このままボクの存在を、どんなに彼女の唯一無二に出来た……彼女を穢した存在として
それはとても残酷で、罪深いもので、永遠に拒絶されかねない烙印だ
そうだとしても、君の特別になれるのならば……

フェイ「ーーーいや、いいよ……ごめん」
結季「え……」

ーーー彼女に触れることもなく、ボクはその身を離した

特別にはなりたかったけどーーー取り返しのつかない事態にする勇気は無かった
……大切な存在を、自ら傷付け、穢すことなんて出来なかった

フェイ「ーーーちょっと、外の空気を吸ってくるよ」
結季「ちょ、フェイ……！」

居たたまれなくなり、窓から飛び出す

飛び出すや否や、自らを若草色の光に包み込む

髪の一部が長い耳となり、腰に丸い毛並みが現れる

ボクの妖怪・兎神としての姿

街灯の無い道を、屋根伝いに駆け抜けていく

辿り着いたのは、鉄塔の上

「……最低だ」

嫉妬のままに、自分の感情のままに

彼女を傷付け、穢そうなんて考えた自分が

そのまま泣き続け、気がつけば夜明けが迫っていた