検索窓
今日:10 hit、昨日:0 hit、合計:21,013 hit

26 ページ29

「…あの」

自分が肩を叩いたくせに僕は固まってしまったらしい。女の人が声をかけてきた。

『わ、えっとすみません急に!あの…その傷』

「………あぁ。大丈夫です 気にしないで下さい。」

『い、いやでも、ちゃんと手当とか…」

「ほんとに、大丈夫なので」


そう言って女の人は腰を上げた。

…いや上げようとした








「わっ」



がしゃん!とその女の人は持っていた鞄ごとふらついて床に倒れてしまった。








『わ!大丈夫ですか!?』
僕は慌てて彼女の体をおこして植え込みの端にまた座らせた。








「…ごめんなさい、急に」

『いやいや、こちらこそすみません…大丈夫…じゃないですよね』

「いや、ほんとに大丈夫です」






彼女はずっと大丈夫としか言わない。
だから僕は強引に






『大丈夫ばかり言う人は大丈夫じゃない人が多いです。僕の周り、そういう人達が多いので…誰か待ってるんですか?このマンションの方ですか?』







彼女の前でしゃがみ、そう聞いた。僕自身もなぜこの女の人を気にしているのかわからない。









「……いえ、家はここじゃなくて、もう少し行った先のマンションで……少し、疲れたのでここに座って休憩して…」




女の人は途切れながらもそう答えてくれた。




『そうなんですね……えっと、僕の家ここなので、手当てだけでもしていって下さい。あ!えっとそういう事はしないし、大丈夫です!!包帯もがさつだしこのまま手当てしないで傷口から菌が入って病気になったりとかされても困るので…』







そのまま沈黙が続き、しばらくして







「……じゃあ手当てだけ、お願いします」








小さな声でそう彼女は言った。









何故、見ず知らずの人を僕はこんなに気にかけるのか、この時はいくら考えてもわからなかった。

27→←25



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (20 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
62人がお気に入り
設定タグ:歌い手 , まふまふ , 銀我一等星   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:銀我一等星 | 作成日時:2016年8月25日 11時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。