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「…あの」
自分が肩を叩いたくせに僕は固まってしまったらしい。女の人が声をかけてきた。
『わ、えっとすみません急に!あの…その傷』
「………あぁ。大丈夫です 気にしないで下さい。」
『い、いやでも、ちゃんと手当とか…」
「ほんとに、大丈夫なので」
そう言って女の人は腰を上げた。
…いや上げようとした
「わっ」
がしゃん!とその女の人は持っていた鞄ごとふらついて床に倒れてしまった。
『わ!大丈夫ですか!?』
僕は慌てて彼女の体をおこして植え込みの端にまた座らせた。
「…ごめんなさい、急に」
『いやいや、こちらこそすみません…大丈夫…じゃないですよね』
「いや、ほんとに大丈夫です」
彼女はずっと大丈夫としか言わない。
だから僕は強引に
『大丈夫ばかり言う人は大丈夫じゃない人が多いです。僕の周り、そういう人達が多いので…誰か待ってるんですか?このマンションの方ですか?』
彼女の前でしゃがみ、そう聞いた。僕自身もなぜこの女の人を気にしているのかわからない。
「……いえ、家はここじゃなくて、もう少し行った先のマンションで……少し、疲れたのでここに座って休憩して…」
女の人は途切れながらもそう答えてくれた。
『そうなんですね……えっと、僕の家ここなので、手当てだけでもしていって下さい。あ!えっとそういう事はしないし、大丈夫です!!包帯もがさつだしこのまま手当てしないで傷口から菌が入って病気になったりとかされても困るので…』
そのまま沈黙が続き、しばらくして
「……じゃあ手当てだけ、お願いします」
小さな声でそう彼女は言った。
何故、見ず知らずの人を僕はこんなに気にかけるのか、この時はいくら考えてもわからなかった。
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作者名:銀我一等星 | 作成日時:2016年8月25日 11時