Statice ⇔ 05 ページ6
赤い、赤い。
.
耳鳴り。
鼓膜を劈くようなブレーキ音と、叫び声。
何かがぶつかる音に、鉄の臭い。
全てが嫌で、思い出したくなくて、耳を塞ぐ。
意識の狭間で、誰かが笑ったような気がした。
.
「あ、れ」
水の中にいるような浮遊感から、一気に覚醒する。
救急車のサイレン、ガヤガヤと騒がしい野次馬の声。ねぇ、これ
知ってる。
履いている真っ白なスニーカーの周りに、赤黒い何かが流れて。
次第に赤く、染まるのだ。
呆然と立ち尽くす僕の名を、誰かが呼んだ。
目線を少し上げれば、アスファルトに横たわった女性。
すぐそばで、自動車はガードレールにぶつかって凹んでいる。
なんの感情もなく佇む僕は、酷く滑稽と言えるだろう。
それでもね、知っていた。
危険だから。近づいたら、きっと。
壊れてしまうよ。
僕の、僕達の世界が。
『もう一度、目を瞑って』
『征十郎は、何も見ていない』
『目を瞑れば、ずっと一緒』
ずっと、一緒
その声が、重なった。
もう、あの笑顔が思い出せなくて。
馬鹿みたいな日々が、宝物だったと気が付いた頃には、もう遅い。
横たわった女性は、眠っている時のように寝返りをした。
白い肌がイノセンスを感じさせ、目を見張る。
彼女の周りは赤く染まっているのに、何故か一面お花畑のような、そう見える程美しく口角が上がる。
[ 思い出した、? ]
魔法が溶けたような、金縛りが溶けたような、意味不明な解放感。
一歩踏み出して、喉が震えた。
あぁ、知ってる。
3年前の、冬
僕達の小さな世界の消失
震えた声で名前を呼ぶと、色が変わった。
朝靄の中にいるような、世界に。
167人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「黒子のバスケ」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
雨紅(プロフ) - 何度もコメント失礼します。本当に何回読んでも泣いてしまいます。人間の内面を抉るような文章の書き方、全てに感動しました。繰り返し読んでいます。ありがとうございました。 (2015年12月7日 0時) (レス) id: 85987802b2 (このIDを非表示/違反報告)
緋莉(プロフ) - 感動と切なさで胸が一杯です。。素敵な小説をありがとうございました!! (2015年8月23日 21時) (レス) id: 758bbf0526 (このIDを非表示/違反報告)
悪童 - 赤司様がいいです!!! (2015年7月20日 20時) (レス) id: 36a059792c (このIDを非表示/違反報告)
水城(プロフ) - 赤司様で!!! (2015年5月13日 23時) (レス) id: 4984122abc (このIDを非表示/違反報告)
雨紅(プロフ) - 赤司くんがいいです!! (2015年5月13日 19時) (レス) id: 4a5e53c7aa (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:綵架 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ayakamakar1/
作成日時:2015年4月25日 18時