溢れる愛を君に2【河野純喜】 (ページ11)

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純｢頭の中には3人で幸せに暮らしてた

家族の記憶がちゃんとあるはずなのに

それよりも鮮明に残ってるのが

お互いを罵り合うお父さんとお母さんの姿｣

｢そこから

"好き"だとか"愛"だとか

そういうものが何も分からなくなって

気づけば友達にさえも心開けなくなった｣

｢そう言ってたんです。

だから告白した時も

凄く悩んで返事してくれました。｣

なのに俺はなんで…

彼女のトラウマを掘り起こすようなことを

わざわざやってしまったんだと

やっぱり後悔が押し寄せてくる。

奨｢で、

純喜がそれを掘り返しちゃったわけだ｣

純｢ちょ、傷えぐらんといてもらえます？？｣

押し寄せてる後悔を他人から言葉にされると

なかなかに傷がえぐれるものだ。

奨｢それで？純喜はどうするの｣

純｢どうするって…｣

今振り返っても

あの頃の自分何考えてたんやろって思うし、

そもそも俺らみたいな仕事してる奴らに

結婚なんて1番無縁なワードだ。

純｢俺らって結婚どころk｣

奨｢俺はそうとは思わないよ｣

俺が言い終える前に奨くんは遮って

真剣な目で俺を真っ直ぐに見つめて

そう言った。

奨｢アイドルである前に1人の人間。男。

そこにアイドルだからっていう

諦める考えはいらないと思う。｣

前例がないだけだよ。と

奨くんはコーヒーを飲み干して言った。

純｢前例がないなら作ればいい、

なんて言いますよね｣

なんて口にしてみるけど

どちらにしても自分の横暴な考えで

彼女を傷つけてしまったことに変わりは無い。

基本、仕事でもプライベートでも

悩み事なんてないから

こんなに頭を悩ませることは久しぶりだ。

ラテ独特の苦味が舌に残ってザラザラする。

奨｢悩みすぎ…(笑)

また倒れるよ、やめてやめて｣

純｢俺、そんなひ弱じゃないです｣

2人とも飲み終わったし

店内のお客さんも増えてきたということで

カップを捨てて店を後にした。