第百八十六訓:家族という絆 ページ45
ひんやりとしたナニカが頬に触れる。
その感覚に誘われるかのように、うっすらと目を開くと、俺よりも深い紅と交わった。
「気付いたのね‥‥‥‥よかった」
安堵の笑みを浮かべたA。
だがそんな穏やかさは束の間、気分は悪くないか、頭は痛くないか等々 矢継ぎ早に問いを投げかけてくる。
「熱中症よ。自覚、あったでしょう?」
「‥‥べつに、ちょっと変だとは思ったけど」
真剣な表情でじっと見つめられる。
その瞳[め]に居心地の悪さを感じ、ゴロリと寝返りを打ち、背を向けた。
「辛い時には 辛いと、ちゃんと言いなさい。
貴方ひとり、置いていったりしないから」
こんな時、どうすればいいか解らなかった
熱で苦しくても、腹が痛くなっても、いつもひとりだったから
誰かに心配された事も、他人[ひと]を頼った事も、一度もなかったから
だから 俺はAに、何を言えばいいか解らなかった
後ろから ため息をつく音が聞こえると「銀時」と諭すような声で語り掛けられる。
「いつか、
貴方に“家族”とは何か
そう、問われた事があったわね」
「‥‥‥‥血のつながりがある奴のことだろ」
首を回し、横目でAを見ると、苦笑交じりに微笑んでいた。
「それは定義。貴方がしりたかったのは、そんな上辺だけの事じゃないでしょう?」
だから貴方はその疑問を口にした、と不敵に笑うA。
まるで見透かされたような表情[つら]に、フイと顔を背けた。
「嬉しい時には喜びを分かち合って、哀しい時には痛みに寄り添える。
血の繋がりがなくったって、生まれた場所、その過程が違ったって構わない。
何があっても 一緒にいたいと思える人。
たとえ苦しみを伴う事になっても、共に悩み、苦しみ、それでも傍にいる事を選ぶ人。
貴方という人を信じて、同じ歩幅で、隣を歩いてくれる人。
そういった“つながり”を持つ人達の事を、“家族”と呼ぶんじゃないかしら」
なんでだ
怪我したワケでもないのに、胸の奥が痛い
身体を縮こまらせ、ぎゅっと胸元を掴む。
「私と松陽にとって、銀時[あなた]は大切な家族よ」
目を見開き、振り返る。
優しげな紅い瞳[め]が俺を見つめていた。
「大事なものはね、心なの。
私達は皆 不確実で曖昧で、バラバラな存在。だからこそ、家族でありたいと願う心[想い]が他者と己をつなぎ、
家族という、絆[つながり]を築くのよ」
家族、か
「‥‥‥‥むずかしくて、わかんね」
だけど、暖かくて確かなモノが沁み渡っていくのに、悪い気はしなかった。
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椿(プロフ) - カフンショウさん» ご質問ありがとうございます!今のヒロインちゃんは無表情で何も喋りません。ただ、虚様とは何百年も一緒にい続けたので、目を見ると何を考えてるかぐらいは解ります。なので(?)彼があんな事やこんな事、そんな事まで強要しても従順に従っちゃいます← (2018年8月29日 23時) (レス) id: 29cb1b4279 (このIDを非表示/違反報告)
カフンショウ(プロフ) - こんにちは、いつも見てます。1つ質問です。主人公は今虚様のところにいますが、喋ったりしているのですか?あと、表情はどうなっているのですか!教えてください。先生!← (2018年8月29日 22時) (レス) id: ded7f4dd14 (このIDを非表示/違反報告)
椿(プロフ) - ミナト班 (´ω`*)さん» ありがとうございます!虚様との共闘…頑張ります。。堕ちちゃいましたが、彼女なりに闇の中から抗いますので、どうぞお楽しみに! (2018年8月11日 11時) (レス) id: f218e1e191 (このIDを非表示/違反報告)
ミナト班 (´ω`*)(プロフ) - いつも、楽しく拝見させて頂いております。更新頑張ってください!主人公闇堕ち良いですね!!虚と主人公の初めての共同作業(?)楽しみにしてます! (2018年8月11日 1時) (レス) id: c1de0d9e94 (このIDを非表示/違反報告)
椿(プロフ) - ぱぴこさん» ありがとうございます!そう言って貰えると嬉しいです(o^^o) 細々と更新していきますので、覗きに来てやってください(笑) (2018年8月7日 11時) (レス) id: f218e1e191 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:椿 | 作成日時:2018年8月4日 10時