第百八十一訓 本物の切り札 ページ40
――――しゃらーん
右手に剣、左手に鈴。
二つの神器を用い、骸の山を舞い踊る巫女。
血に濡れた戦場だというのに、その瞳は虚ろ[からっぽ]だというのに、アイツはただ綺麗で、俺達の手に届かない存在だと思えた。
――――しゃらーん
一帯に鳴り響く鈴の音。
すると、目を疑う光景が飛び込んできた。
――――ズズズ
「‥‥‥‥‥嘘でしょ。
だって、アイツら結晶刀で倒された筈じゃ‥」
不死を奪われ、崩れ落ちた奈落が手をつき苦しそうに這い上がる。
ドボドボと血を流し、立ち上がるその様は、虚[不死]の血で再起する屍よりも惨い姿だった。
既に致死量のそれを流し切り、動ける筈のない物達が銀時達に襲い掛かる。
しかし 驚くべきは、その風体からは想像できないほど俊敏な動きをみせたこと。
蓄積した疲労や死を全く感じさせないそれは、一行に奇妙な違和感を与えた。
「鵺がなぜ“黒巫女”と呼ばれているか、しっていますか」
戦地で舞い踊るAを見据え、虚が微笑む。
Aの足元には、結晶刀で斬られ不死を失った屍。
だがAが舞った直後、そいつらの閉じた眼がカッと開き、ユラユラと不気味な動きをしながら、次々と這い上がる。
まさか‥‥
「一羽の烏として、その手を血で染めるだけではない。
時には 未来を視通す神の眼をもって政の陰から糸を引き、時には 屍と化した物も その神通力をもって傀儡として操ってきた。
つまり、君達が憎んだ世界は彼女が創り上げたというわけです」
虚の言葉に耳を疑った。
戦場だという事も忘れ、頭の中がまっしろになりそうだった。
「‥‥ただ、彼女に与えられた役目は暗殺だけに留まらなかった」
‥‥‥こういう事かよ
いつか信女が語った言葉が頭の中を反芻する。
ギリッと歯を噛み締め、虚を睨んだ。
「あの犬と共に龍脈を護り続けてきた黄龍の巫女。その一族の始祖が鵺です」
つまり、今立ち阻む奈落達は既に死者で、虚の指示のもとAが傀儡として操っている。
表しようのない怒りが肚の底から込み上げた。
こいつは人間を何だと思ってやがる
誰よりも命の重みをしってるAが、死人を玩具にして傷つかないワケねぇだろ
虚を睨む眼に鋭さが増す。
剣を握る力が強まった。
「夜の烏[鵺]ほど美しいものはない。
どうですか、化物のキリフダは」
紅い目はうっとりと細まり、その表情は恍惚に染まっていた。
「坂田銀時。あなたに彼女を斬る事ができますか、敬愛する師を斬る苦しみを選べますか」
第百八十二訓 血染めの月が満ちる刻→←第百八十訓 切り札はとっておけ
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椿(プロフ) - カフンショウさん» ご質問ありがとうございます!今のヒロインちゃんは無表情で何も喋りません。ただ、虚様とは何百年も一緒にい続けたので、目を見ると何を考えてるかぐらいは解ります。なので(?)彼があんな事やこんな事、そんな事まで強要しても従順に従っちゃいます← (2018年8月29日 23時) (レス) id: 29cb1b4279 (このIDを非表示/違反報告)
カフンショウ(プロフ) - こんにちは、いつも見てます。1つ質問です。主人公は今虚様のところにいますが、喋ったりしているのですか?あと、表情はどうなっているのですか!教えてください。先生!← (2018年8月29日 22時) (レス) id: ded7f4dd14 (このIDを非表示/違反報告)
椿(プロフ) - ミナト班 (´ω`*)さん» ありがとうございます!虚様との共闘…頑張ります。。堕ちちゃいましたが、彼女なりに闇の中から抗いますので、どうぞお楽しみに! (2018年8月11日 11時) (レス) id: f218e1e191 (このIDを非表示/違反報告)
ミナト班 (´ω`*)(プロフ) - いつも、楽しく拝見させて頂いております。更新頑張ってください!主人公闇堕ち良いですね!!虚と主人公の初めての共同作業(?)楽しみにしてます! (2018年8月11日 1時) (レス) id: c1de0d9e94 (このIDを非表示/違反報告)
椿(プロフ) - ぱぴこさん» ありがとうございます!そう言って貰えると嬉しいです(o^^o) 細々と更新していきますので、覗きに来てやってください(笑) (2018年8月7日 11時) (レス) id: f218e1e191 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:椿 | 作成日時:2018年8月4日 10時