第百六十一訓 番犬 ページ20
――――しゃらーん
その音が、まるで開始の合図であったかのように。
鈴の音を切欠に、一斉に襲い掛かる屍。
――――ガキィィイン
「何だコイツら!?まるでデタラメな戦い方しやがる‥っ!!」
剣を腕ごと斬り落とされても、無表情で突進し、あろう事か、刃を歯で受け止める。
歯を砕かれ、口がぱっくり裂けても、皮の繋がる かつて口だった部位で脚や腕に噛みつき、動きを封じようとする。
それは自分の命に執着がないからこそできる戦い方。
同じ人間とは思えなかった
「ははっ。違いねェや。
コイツらには痛覚ってもんが無いんですかねェ」
楽しげな声色にハッとして 視線をやると、口元で弧を描いた総悟。
その赤い眼がギラギラと歪な光を放っていた。
敵の血飛沫を浴びながら、嬉々として屍を斬る姿に、戦慄した。
「俺は今、腹の虫の居所が悪いんだ。
あんまりしつこいと、俺の趣味全開でミンチにされても‥‥文句は言えねェぜ」
「オイ、総悟。お前‥」
――――‥血に魅入られてんじゃねェぞ
俺の懸念をよそに、チッと舌打ちした総悟は目にも留まらぬ早業で敵を屠る。
さっきまでの不気味さを潜めた赤い目は、至って冷静だった。
「心配しなくても、大丈夫ですよ。土方さん」と苦笑交じりで呟いた。
「俺ァ別に自分を見失っちゃいねェ。
ちゃんと道理って奴は見えてまさぁ。
何人コイツら斬ったところで何も変わりゃしない。
このふざけた戦い[あそび]終わらせるには、本丸落とすしかねェって事ぐらい
ちゃんと‥‥解ってますよ」
そういった総悟の眼は、真っ直ぐにAを見据えていた。
目線を敵へと戻す。
武器を持たぬ物、武器を持つ腕を失くした物。
立つ事もままならないコイツらが、それでも立ち上がり、動き続ける理由――――それは偏に、俺達がAのもとへ たどり着く事を阻むため。
しゃらん、と澄みきった音を鳴らし、光の柱の前で舞い踊るA。
ずるずると体を引き摺りながら、俺達を取り囲む屍を複雑な気持ちで睨みつけた。
「てめェらがA[女王様]を護る番犬なのかは しらねェが、そいつァ てめェらだけの専売特許じゃねェ。
俺達は江戸の平和を護る――――この街の番犬だ。
本物の番犬[犬のおまわり]、ナメんなよ」
第百六十二訓 終焉の始まり→←第百六十訓 甘い物の後には辛い物が欲しくなる
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椿(プロフ) - カフンショウさん» ご質問ありがとうございます!今のヒロインちゃんは無表情で何も喋りません。ただ、虚様とは何百年も一緒にい続けたので、目を見ると何を考えてるかぐらいは解ります。なので(?)彼があんな事やこんな事、そんな事まで強要しても従順に従っちゃいます← (2018年8月29日 23時) (レス) id: 29cb1b4279 (このIDを非表示/違反報告)
カフンショウ(プロフ) - こんにちは、いつも見てます。1つ質問です。主人公は今虚様のところにいますが、喋ったりしているのですか?あと、表情はどうなっているのですか!教えてください。先生!← (2018年8月29日 22時) (レス) id: ded7f4dd14 (このIDを非表示/違反報告)
椿(プロフ) - ミナト班 (´ω`*)さん» ありがとうございます!虚様との共闘…頑張ります。。堕ちちゃいましたが、彼女なりに闇の中から抗いますので、どうぞお楽しみに! (2018年8月11日 11時) (レス) id: f218e1e191 (このIDを非表示/違反報告)
ミナト班 (´ω`*)(プロフ) - いつも、楽しく拝見させて頂いております。更新頑張ってください!主人公闇堕ち良いですね!!虚と主人公の初めての共同作業(?)楽しみにしてます! (2018年8月11日 1時) (レス) id: c1de0d9e94 (このIDを非表示/違反報告)
椿(プロフ) - ぱぴこさん» ありがとうございます!そう言って貰えると嬉しいです(o^^o) 細々と更新していきますので、覗きに来てやってください(笑) (2018年8月7日 11時) (レス) id: f218e1e191 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:椿 | 作成日時:2018年8月4日 10時