第百二十二訓 エゴ ページ29
聞こえる筈の鼓動が、脈打つ筈の感覚がなかった。
Aの胸はただ、無音で冷たかった。
「私の躰はアルタナで構築されている。心臓を失ったところで、大気を漂い、地から吸収できるアルタナが存在する限り、この躰が生命活動を止める事はない」
“生命活動と呼べるものじゃないかもしれないけどね”
「怖くなった?」
握った手を解放し、力なく笑うA。
その面が 痛々しく映った。
褥から見える紅い月。
夜空に浮かぶそいつに、Aは遠い過去を視ていた。
「あの子はね、二度 死にかけた事があったの」
そういって 俺もしらない 松陽でもない頃の――――Aだけがしる虚を語り始めた。
孤児だった虚。
行き倒れていた所をAに拾われ、人として育った。
しかし、その幸せは長くは続かず、野党に襲われ 再び死の危機に瀕した虚。
虚の命をつなぐため、自らの心臓を差し出したのが――――A。
「あの子は‥‥あの人は きっと、私を恨んでいるわ」
そういって俯くAは哀しそうに微笑んだ。
「‥‥虚は どうして不死になる事を選んだ。不死者のお前が‥‥‥いや、命の重みを誰よりもしってるお前が、不死なんてもん 簡単に押し付けるワケねェだろ」
その言葉に、目を見開くA。
紅い目が緩く細まり、ひと言「ありがとう」と。
「彼と共に生きる――――そんな夢をみてしまった。未来を望んでしまった‥‥‥結果的に その選択が、あの人を苦しめ、変えてしまった」
紅い目はどこか空虚だった。
ガラス玉のようなそれは、過去に伸びた影を見ているのだろうか。
「全て、私のエゴのせいよ」
第百二十三訓 銀の泪に託す願い→←第百二十一訓 生物の理を逸脱させる存在
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椿(プロフ) - 朱寧さん» めちゃくちゃ嬉しいコメントありがとうございます(´;ω;`)この先シリアスが続きますが、どうぞ温かく見守ってやってください(ペコリ) まだまだ暑くなりますので、朱寧さんも熱中症等にお気を付けください! (2018年7月31日 0時) (レス) id: 29cb1b4279 (このIDを非表示/違反報告)
朱寧(プロフ) - 本当に面白いお話で、もう続きがすごく気になります!!何と言うか、少し切ないからこそ素敵なお話なんだなあ、と感じました。原作に寄り添っている感じがして、読んでいて幸せでした。長文失礼しました、お体気をつけて頑張って下さい! (2018年7月30日 23時) (レス) id: 28fe66ac14 (このIDを非表示/違反報告)
椿(プロフ) - まっちゃあいすさん» ありがとうございます!全力でガンバリマス(`・ω・´)ゞ (2018年7月17日 22時) (レス) id: 29cb1b4279 (このIDを非表示/違反報告)
まっちゃあいす(プロフ) - 続編おめでとうございます!これから先の展開にワクワクです。更新頑張ってください!!! (2018年7月17日 14時) (レス) id: c64bf4929c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:椿 | 作成日時:2018年7月16日 21時