第三十八訓 鬼が哭いた日 ページ42
公園のベンチに腰掛け、空を見上げた。
煙草の煙が、灰色の空をさらに曇らせる。
目の前に、首輪を付けた一匹の猫が現れた。
そいつは不安そうな目をしながら、真ん丸な眼で じっと俺を見つめてきやがった。
「お巡りさんが、迷子の猫ちゃんそっちのけで迷ってたらダメでしょう」
声のする方を見やると、紅い瞳をした いつかの女がいた。
女は「おいで」と手招きし、猫を撫でている。
「久坂 美羽‥‥」
定々の悪行を俺にリークし、国盗合戦を首謀した策略家。
そして将軍護衛時には、その剣でそよ姫を護った功労者。
ああ、それともう一つ。
この女には、借りがあったな。
「総悟を、助けてくれたそうだな‥‥世話になった」
あの時、敵の中には夜兎も紛れてたらしい。
いくら総悟でも、傭兵部隊を一緒に相手取っていちゃ勝ち目は薄い。
美羽という女が眩しく、大きく映る。
将軍家も真選組も護った女がいる一方で、俺はなんだ
将軍を死なせ、今度は近藤さんまで失おうとしてる
自身の無力さに嫌気がさした。
「やるべき事をしなさい」
美羽の腕の中にいる猫が、ピクリと耳を立て 何かを感じ取ったような顔をした。
「おいきなさい」と解放すると、猫は一目散に走っていく。
猫が駆ける先に、一つの影法師。
猫の飼い主らしき人がこちらに向かって頭を下げている。
美羽が軽く会釈すると、そいつらは姿を消した。
「嘆くだけじゃ何も変わらない。“真選組”という組織ではなく“土方十四郎”個人として、貴方のすべき事をやりなさい」
重い雲間から、一筋の光が差した。
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椿(プロフ) - 夜空 星月さん» ま、ま、まじですか!ありがとうございます( ;∀;) 明日も更新しますので、ぜひご覧になってください☆ (2018年6月3日 23時) (レス) id: f218e1e191 (このIDを非表示/違反報告)
夜空 星月(プロフ) - とても面白かったです!なんで今まで気付かなかったんだろうって後悔したくらい。更新楽しみにしてます! (2018年6月3日 23時) (レス) id: 5d15086cca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:椿 | 作成日時:2018年5月20日 23時