第十九訓 二匹の鬼 ページ21
「真なる敵は、その鬼ども。松陽の、弟子達だ」
定々よ
傀儡としての最後の役目を果たし
その礎となれ
「一足遅かったわね。朧‥‥」
骸
かつて天導衆に仕え、幼くして奈落三羽に数えられたお前が
「よりにもよってあの男。松陽の弟子と手を組み、天導衆に刃を向けるか」
お前もまた、あの人を裏切るというのか
ならば、次会う時はどちらかの羽が散る事になろう
ああ、そうだ
聞いておかねばならんことがあったな
「似ていたか。あの弟子達は、松陽に‥‥」
瞼を閉じ、記憶を辿る。
師の隣りを歩む弟子達と邂逅したこと。
その者たちに憎しみの眼差しを向けられたこと。
「似てない」
骸の返答を聞き、心の奥底で安心している己がいた
「でも、同じだった。二人とも悲しい目をしてた」
そうか、と呟く。
暫し時が流れたが、消えぬ骸の気配に「どうした」と言おうとした矢先。
「ねえ、朧‥‥“A”ってしってる?」
刹那、心の臓が止まる錯覚に陥った。
ああ、よくしっている
俺に幸福を与え
俺がその全てを奪ったのだから
「お前たちも、あの人を師と仰いでいたのであったな」
いつの間にか骸の気配はなかった
あの人から大切なもの全てを奪っておきながら
心の奥底では、まだあの美しい女性に縋る自分がいる
懐から、古ぼけた小さな守を取り出した。
「あなたを想うこの心をお赦しください――――A先生」
呟いた言葉は、風と共に消え去った。
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椿(プロフ) - 夜空 星月さん» ま、ま、まじですか!ありがとうございます( ;∀;) 明日も更新しますので、ぜひご覧になってください☆ (2018年6月3日 23時) (レス) id: f218e1e191 (このIDを非表示/違反報告)
夜空 星月(プロフ) - とても面白かったです!なんで今まで気付かなかったんだろうって後悔したくらい。更新楽しみにしてます! (2018年6月3日 23時) (レス) id: 5d15086cca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:椿 | 作成日時:2018年5月20日 23時