第十訓 300円あげるからこれ以上は言わないで下さい ページ12
「ごめんください」
午後三時
半休を取った私は、以前貰った名刺を頼りに“万事屋銀ちゃん”と掲げられた玄関の前にいた。
すると、ドタドタと騒がし気な足音と共に、扉が勢いよく開かれた。
「美羽ー!待ってたアルよ!」
ニコニコと満面の笑みで出迎える神楽に微笑み返す。
遅れて銀時も顔を出し「待ってたぞ」と笑っていた。
万事屋までの道すがらで買った土産を神楽に手渡す。
「キャッホー!江戸じゃ代官山でしか手に入らない銀龍苺の大福ネ!」
「全部ひとりで食うんじゃねーぞ」
嬉々として走っていった神楽ちゃんに注意する銀時
その横顔はまるでお父さんみたい。
振り向いた銀時が苦笑する。
「悪いな」
「いいのよ」
「お前、銀ちゃんのこれアルか?」
開口一番。
差し入れた菓子を食しつつ、小指をピシッと立てる神楽に新八が慌てふためく。
「ちょっとォォォ!!神楽ちゃん、美羽さんに失礼じゃないか!こんな天パの‥こ、恋人なわけないでしょ!」
「こんなモジャモジャのどこがいいアルね」
「天然パーマ関係ないよね?しかも美羽じゃなくて、俺に対して失礼だよね!?それ!!」
万事屋恒例の茶番をニコニコと見守る美羽。
「昨日、真選組に絡まれてるところを銀さんに助けてもらったの」
今日はそのお礼、と微笑む美羽。
「あいつらは正義の警察を取り繕ったただの野蛮人ネ。美羽も気を付けるアル」
「いや、神楽ちゃん。あれだけあった美羽さんの差し入れ、ほとんど一人で食べつくす方がよっぽど野蛮人だと思うよ」
「仕方ないネ。万事屋の家計は毎日、火の車。あの甲斐性無しがやっと稼げる女見つけたアル。甘い汁は啜えるうちに啜っておくべきネ」
「神楽ちゃァァん!300円あげるからこれ以上は黙っててェェ!!」
あるがままの事実を包み隠さず述べる神楽に、背筋が寒くなる俺。
新八なんか「お茶淹れてきます」つって台所に逃げやがった。
あー、美羽からの視線が痛い。
「銀さん」
冷ややかな声に、肩が跳ね上がる。
冷や汗だらだらで美羽の顔を見ると――――笑っていた。
目、以外は。
俺、終わった。
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椿(プロフ) - 夜空 星月さん» ま、ま、まじですか!ありがとうございます( ;∀;) 明日も更新しますので、ぜひご覧になってください☆ (2018年6月3日 23時) (レス) id: f218e1e191 (このIDを非表示/違反報告)
夜空 星月(プロフ) - とても面白かったです!なんで今まで気付かなかったんだろうって後悔したくらい。更新楽しみにしてます! (2018年6月3日 23時) (レス) id: 5d15086cca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:椿 | 作成日時:2018年5月20日 23時