ひとりじゃない ページ9
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『 どう?落ち着いた?』
「 …うん。
ごめんね、急に取り乱して 」
善逸くんがずっと背中を
さすってくれていたおかげで
だんだんと落ち着いてきた。
心が軽くなった。
しのぶ姉さんやカナヲには
なかなか言えなかったこと
我慢していたものが
一気に溢れ出たような気がした。
『 ううん。
むしろ話してくれて嬉しかった 』
善逸くんはにっこりと笑うと
そのまま光る月を見上げた。
『 俺はね、孤児だったんだ。
だから家族のことなんて
なんにも知らない。
ずっと一人だった。
だから 誰かに必要とされたかった。
きっと女の子に騙され続けたのも
そのせい。
騙されてるのがわかってても
どんな理由でも 必要とされてるなら
それでいいって思ってたんだ 』
そう話す善逸くんの横顔は
たまらなく儚げで、さみしそうだった。
『 Aちゃんにはきっと
素敵な家族がいたと思うよ。
思い出せないのには
何か理由があるんだよ。
ゆっくり思い出せばいいよ。
少しずつ。
絶対に思い出せるから 』
優しい大きな手が
私の頭にぽんと乗る。
『 しのぶさんたちに言えなかったら俺に言ってよ。
いつでも聞くからさ。
Aちゃんはひとりじゃないよ 』
「 っ…ありがとう 」
『 うん!じゃあ、帰ろうか 』
そう言って歩き出す善逸くん。
私の不安を取り除いてくれた。
受け入れて、寄り添ってくれた。
だから私も 善逸くんの
寂しさも、不安も全部取り除いてあげたい。
「 …待って!」
『 …? どうしたの?』
不思議そうに振り向く善逸くん。
伝えなきゃ…
言葉で言わなきゃ伝わらない。
「 私だって、善逸くんのそばにいるよ!
善逸くんがつらいなら、さみしいなら
私がそばにいる。
善逸くんだって、ひとりじゃないから!」
どん底の暗闇にいた私の手を引いて
善逸くんは明るい所へ引き出してくれた。
だから私は善逸くんの暗闇を照らす
光になれるように…
『 っ…ありがとう!』
善逸くんは涙を流しながら
とってもとっても嬉しそうに笑った。
" ひとりじゃない "
そう言ってもらえるだけで
どんなことでもできるくらい
強くなれる気がした。
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mini(プロフ) - stereogirlさん» コメントありがとうございます(T_T)!更新頑張ります!! (2020年4月20日 21時) (レス) id: 91678dce2b (このIDを非表示/違反報告)
stereogirl(プロフ) - 強い女子と善逸くん、大好きな組み合わせです(笑)続き楽しみにしてます! (2020年4月20日 19時) (レス) id: ebd32c96af (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:mini | 作成日時:2020年4月12日 20時