2人の秘密 ページ8
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「 私ね、4歳までの記憶がないの 」
『 4歳までの記憶…?』
不思議そうに聞く善逸くん。
「 そう。
だから、家族がいたかどうかも何もかも覚えてない。
気が付いたら 森の中で倒れてて
手には着物を握りしめてた。
握りしめてたのはこの羽織。
着物だったのを
アオイが羽織にしてくれたの 」
『 素敵な着物だね。
Aちゃんによく似合ってる 』
優しい優しい顔で
羽織に触れる善逸くん。
なんでかわからないけど、
それだけで涙が出そうになった。
「 家もわからなくて、わかるのは自分の名前だけ。
どこに行ったらいいかわからなかった。
そのまま 街をフラフラしてたら
カナエ姉さんとしのぶ姉さんが
声をかけてくれたの 」
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『 こんにちは。
私は 胡蝶カナエと言います。
あなたのお名前は?』
「 花妃…A 」
『 Aちゃん。素敵なお名前ね。
お家はどこなの?ご家族は?』
ぎゅっ…
『 『 っ…!』』
『 姉さん、この子… 』
『 そうね… Aちゃん。
私たちと一緒に帰りましょう?』
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「 あの時 姉さんたちが助けてくれなかったら、
私は今頃ここにはいないかも 」
あのまま フラフラと歩き続けて倒れるか
売り手に捕まって どこかへ売り飛ばされたか…
『 じゃあ 俺たちが出会えたのも
しのぶさんたちのおかげってことだね 』
A「 そうだね 」
すると善逸くんは
ぎゅっと私の手を握ってくれた。
『 大丈夫。ちゃんと聞いてる。
だから、無理して笑わないでいいよ 』
きっと音でわかるんだろうけど
私の不安を全て取り除いてくれる。
まだ知り合ったばかりの私に
ちゃんと寄り添ってくれる。
ぶわっと涙が溢れてきて
涙で善逸くんの顔が見えなくなった。
ぎゅっと善逸くんの手を握り返せば、
また強く 握り返してくれる。
「 つらいのっ…
何か本当に大切なことを、
忘れちゃいけないようなことを
忘れてる気がするのに…
全然思い出せないのっ…!」
『 うん 』
「 断片的に出てくるのに、全然わからない…
それが悔しくて、
そんな自分が嫌で嫌で… 」
私が取り乱しても
善逸くんはずっと頷いて
背中をさすってくれていた。
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mini(プロフ) - stereogirlさん» コメントありがとうございます(T_T)!更新頑張ります!! (2020年4月20日 21時) (レス) id: 91678dce2b (このIDを非表示/違反報告)
stereogirl(プロフ) - 強い女子と善逸くん、大好きな組み合わせです(笑)続き楽しみにしてます! (2020年4月20日 19時) (レス) id: ebd32c96af (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:mini | 作成日時:2020年4月12日 20時