たんぽぽの花冠 【我妻善逸】

生きていれば ページ27

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『 Aちゃーん… 』





鬼の血鬼術はもう消えている。

でも、横転した拍子に崩れたところの
煙がすごくてよく見えない。



でも、音は近い。





" ごめんなさい…ごめんなさい…っ！ "





人の声だ！

慌てて駆け寄ると、


ごめんなさいと泣きながら謝る女の子と
倒れている人…



藤色の麻の葉模様の羽織と
スカートの隊服
俺と似た白い刀の柄
花型の鍔





『 Aちゃんっ！！！』





倒れているAちゃんを抱き起こすも
意識がない。





『 ごめんなさいっ…！私が…私がっ…！ 』



『 私がって、どういうこと…？』



『 私、あの変な男に騙されてて
あなたたちの夢の中に入り込んで
精神の核を壊せば、いい夢を見せてくれるって…

でも、失敗したから…

だからっ…刺してしまったんです…！』



『 刺し、た…？』





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最後の乗客を外に出し、
最終確認に戻ったA。





「 もう誰もいない！？いたら返事して！」



『 …てやる 』





誰かいる！！
気配がする…後ろだ！





「 早く逃げよう！」



『 …お前らのせいで私たちは
夢を見せてもらえなかった！！』



「 えっ…？」



『 お前ら鬼狩りの精神の核を破壊すれば
いい夢を見せてもらえたのに！』





泣きながら叫ぶ女性の手には
錐( きり )が握られていた。





『 あんただけでも殺してやる…
私と一緒に死になさいよっ…！！』





そう叫ぶのと同時に
私の方に向かって女性は走ってきた。

あの錐… ただの錐じゃない…？





グサッ…





『 なんで…なんで避けないの… 』



「 わかる、から…
その気持ち、痛いほどっ…わかるから… 」





刺されたまま女性を抱きしめた。




辛いよね
現実を生きるのって。


生きていれば
辛いことがたくさんある。


夢を見ていれば
ずっとずっと 幸せでいられる。





「 つらいよね…

ずっと夢を見ていたい。
私も夢を見ていたかった。


でもね、辛くても生きなきゃいけない。


どんなに辛いことがあっても
前を向いて生きなきゃいけないの。


嫌なことばっかりじゃないよ…
生きていれば、いつか良いことがあるから 」



『 いい…こと…？』



「 うん。私にはあったよ…

っ…大切な人ができた。


心から、

守りたい
そばにいたいって

思う人ができたよ 」









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