不器用な男 ページ42
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「 トシっ…しっかりして…!!」
私は自分のスカーフを取り、トシの足に縛り付ける。
『 …るせェ…しっかりしてるわ… 』
「 トシっ…私、トシがいないとっ… 」
『 おいっ!!』
トシは冷静さを保ててない私の顎を持ち、
自分の方を向かせた。
『 …落ち着け。俺は大丈夫だ 』
「 トシ… 」
『 んなに目から汗垂らしてたら前見えねェだろ』
「 っ……ごめん 」
すると後ろからカチャカチャと音がして振り向けば
辺り一面敵だらけだった。
『 姉を握れば、総悟君はよし易しと思っていましたが…
医者の話ではもう長くないとの事。
非常に残念な話だ 』
『 端から俺たち抱き込む為に、
アイツを利用するつもりだったのかよ… 』
『 愛していましたよ。商人は利を生む物を愛でる者です。
ただし ______ 道具としてですが 』
蔵場の最後の言葉に私の理性は事切れ、
飛び上がって斬りかかった。
「 …ふざけんなぁぁぁ!!!……っ…!!」
でも私の刃は奴には届かず、
代わりに私のお腹に放たれた玉が命中した。
『 …バカかテメェ 』
「 っ…だって…!!」
許せなかった。
平気であんな事を口にして、奴は人間じゃない。
人間の心なんて持っていない。
『 さすが夜兎の血が入った女だ。
戦闘民族だけあって、野蛮ですね 』
「 腐れ外道が… 」
トシはと言うと、煙草の煙をフーっと吐き鼻で笑った。
『 俺ァ外道とは言わねぇよ、この女と違って
俺も似たようなもんだからな。
ひでぇ事、腐るほどやってきた 』
「 トシ… 」
『 挙句、死にかけてる時にその旦那
たたっ斬ろうってんだ…ひでぇ話だ 』
自嘲してるけど、本当ならトシだって
ミツ姉の所に行きたいはず。
本当なら、" 好きだ " って伝えたいはずなのに。
『 俺はただ、惚れた女にゃ…幸せになってほしいだけだ 』
______ 本当に不器用な男だよ、トシは。
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リノ(プロフ) - きゅんきゅんが止まらなくて心臓が潰れそうです。これからも楽しみにしています! (2020年10月23日 15時) (レス) id: fc408fc325 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:mini | 作成日時:2020年10月19日 4時