【派生作品】追憶の亡霊山

番外編　皮肉屋さん ページ28

「ばあっ！」

「うわあぁっ!?」

驚かせると、やってきた人は尻餅をついてしまった。
良い反応！

声から察するに女の子だろう。

「あははっ、いい反応ですねー」

からかうようにヘラヘラしながら笑うと

「…『いい反応ですね』じゃないよ」

と怒っているような、困惑しているような声でいわれた。


まぁ、ここは怒って当然だし悪いのは私だから謝らないと……。

「ごめんなさい！校舎裏は涼しいかなぁ…と思って来てみたら……あなたの姿があったので…」

顔を隠しているのもどうかと思うので、お面をずらしてちらりと顔をのぞかせる。


女の子はやっぱりむすっとした顔でこちらを見ていた。

「だからって初対面を驚かさなくたって良いでしょ…まあ、そのメンタルだけは誉めてあげる」

なんとも嫌味な言葉に辛辣だなぁ、なんて思いつつ

「皮肉屋ですねー」

などと思わず言ってしまう。

「だって…あんまりにも息切れしてて、面白くって……」

「バカにしてない？」

驚かした理由を素直に述べれば、これまた不機嫌になってしまう。
人との付き合いって、難しいものだな。

「してないですよ。…それより、あなたお名前は？……あっ、先に名乗るべきですよね。私はアヤ…と申します。あなたは？」

入学したら同級生になるんだし、名前くらい聞いてもいいだろう。

そう思って発言したが女の子は仕方なく、といった感じで

「あたしはハスミ」

と名乗った。



ハスミ……さま…うーん……。



「何だか、“さま”付けがしっくりこないのでハスミちゃんって呼びますね！」

私はなんとなく来る違和感から、“ちゃん”呼びを提案した。
たぶん、嫌がられるんだろうけれど……。

「ん？うん、いいよ。…というか、同い年だし敬語も無しでいいよ」

おぉ…意外なことに、ハスミちゃんはすんなり受け入れてくれた。
その上、敬語を外す提案までしてくれた。

驚きのあまり、ただでさえつり上がっている目尻が余計に上がってしまった気がする。


でも、敬語じゃなかったらどんな風に人と話せばいいんだろう……。

家族以外で敬語を使わずに話す人間なんて、この世に両手で数えられる程度しかいない。
敬語を使わない他人との会話ってどんな感じだっけ……。
後で調べておこう。


そのときの私には、自分が提案したはずの“ちゃん”呼びがどうにも恥ずかしいものに思えた。
　
　
　

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