【派生作品】追憶の亡霊山

巫 ページ23

巫(かんなぎ)

古く、神社にて神の寄りましとなった女性を指す。

(wikipediaより一部抜粋)





「巫(かんなぎ)……」

アヤはその言葉を繰り返した。

何度も何度も。

それでも、己が“それ”になるという自覚はどうにも芽生えなかった。




覚悟が足りないの？

経験が足りないの？


ーーーそれとも、この山への愛が足りないの？




それは、全て当てはまらなかった。

彼女はゴーストタイプのみならず、この山に住まうポケモンを皆愛していた。

なぜ、取り憑かれてまで彼らを愛し続けるのか。

理由は単純明快だ。


アヤが悪夢になやまされたとき、その悪夢から救い出してくれたのは他ならぬ彼らだったからだ。


その中にゴーストタイプのポケモンが多かったから、彼女はゴーストタイプをこよなく愛するようになった。


ただ、それだけ。



では、なぜそれほどの愛をもっている彼女に巫(かんなぎ)となる自覚が芽生えないのか。

これもまた簡単な話だ。



アヤの知る巫(かんなぎ)たちはみな美しく、気品に溢れていたからだ。


彼女たちはポケモンが取り憑くことこそないものの、この山や魂への深い愛情を持っていた。

その心は、まさに聖母そのもので、並の人間が一生かけても到底たどり着きようの無い境地に、彼女らは若くして到着していた。

今こそ、皆それぞれ家庭を持ち散り散りになってしまったもののアヤは幼いながらに彼女たちをしかと瞳に焼き付けていた。



だから、アヤは不安だった。

自分は本当に巫(かんなぎ)としての役目を果たせるのだろうか……と。







継承編 終幕

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