【派生作品】追憶の亡霊山

あたたかいこころ ページ13

ミナモシティのショッピングモールへは、本当にあっという間だった。

さすが長年体力オバケの兄と連れ添っているリザードンなだけある。

「ありがとうなリザードン」

ユウトがそう言ってリザードンをボールへ戻す。
こころは少し残念そうに眉を下げた。



〜



ショッピングは、普段山の中で暮らしている兄妹にとって良い刺激となる。

アヤは、ユウトに服や髪飾りを買って貰って大変ご満悦だ。
ユウトはユウトで、妹にいい服を見立ててあげられて満足している。
こころもアヤに新しいおもちゃを与えられてご機嫌。

それぞれがそれぞれ満たされている中、ユウトが文房具を買いに雑貨店に入ったためアヤとこころも入ることにした。

アヤはこころを万が一のためボールに戻し店内をふらふらとうろついていたが、ふとぬいぐるみコーナーを盗み見た。

褪せたような黄色い布が目に入る。


もしかして…淡い期待を抱きつつそろそろと近寄る。


果たして、そこには彼女が愛してやまないゴーストタイプの中でもとりわけ好んでいるポケモン、ミミッキュのぬいぐるみがあった。

「ほしい…！」

手にとってそう呟いてみたが、一抹の不安が彼女の心を掠める。

13にもなるのにぬいぐるみなんて子どもっぽいかな……。

「いいんじゃないか」

背後でユウトの声がした。

驚いて思わずふり返ると、兄がにへらと笑っている。



あぁ、この人は……アヤの心を暖かいものが満たす。

「兄さまがそういうなら買おうっと」

口から出てくるのは、素直じゃない言葉だけれど

きっと彼にはわかってしまうのだろう。




敬愛する愚かなる兄さまへ

言葉に尽くせない感謝を貴方に

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