【文スト】歳下なんてダメですか【太宰治】

涙。 ページ29

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苦しそうだった、なんて。
度々脳裏に映る視界の悪い雨の様子。
彼はもういないのだから、考えても仕方がない。


「太宰さん？」


店に入って私がぼーっとしていたのか、Aが偶に声をかけてくる。
その声に反応できないまま、沈黙の時間がやってくる。




『俺から見ればお前は子供なんだ』

『上司と部下ではあるがな』

『俺には芥川よりも狭く暗いところで泣いているお前が見える』


━━━━━━━━━━なぁ、太宰。



織田作、私は君と同じように自分の命を賭けてでも守りたいものができたよ。
探偵社の皆という。


「太宰さん、咖喱来ましたよ」

「嗚呼、いただきます」


震える口角を無理矢理上げて、手を合わせてスプーンに咖喱をとった。
あの辛い咖喱ではないけど。


「少し、この咖喱はしょっぱいね」

「……そうですね」


しょっぱい咖喱を、自分では止められないほど口に頬張った。
嗚呼、しょっぱいなぁ。


「御馳走様でした」


Aよりもずっと速いペースで食べ続け、食べ終わり、歯を食いしばって下を向いていた。

Aは何も無いかのように、咖喱を食べていた。


「御馳走様でした、私仕事行ってきますね」

「嗚呼、此処に居るよ」

「はい」


ニコリと笑を零して、Aは他には何も言わずに店を出ていった。
心地良い優しさに、少し甘えようか。

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