目隠し少女と盗賊団 (ページ29)

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Episode128 ／陰と陽ページ29

リングに刺さっているフェイクで投げたナイフ5本を抜いて血を拭う。

男を殺したベンズナイフに血は一滴もついていなかった。

私が使うこれは、以前団長に貰ったものだ。

人を殺せば殺すほど、血を吸って切れ味が良くなり、毒をも作ってしまうという代物。

血だらけの左手、こんななりでゴンたちの元へと戻っていいのだろうか。

そう思うと、足は動かずにその場で立ち竦んでしまった。

戻らなきゃ、時間が無い。

分かっているのに、体が動かない。

そのとき、とんっ、と肩を叩かれた。

｢おつかれA、先進もーぜ｣

キルが頭をぽんぽんしてくれたおかげで、忘れていたかのように涙が溢れた。

｢はいはい、お前は悪かねーよ｣

と、慰めながら私の手引いて歩いてくれるキルに身を任せ、私たちは小部屋に案内された。

キルだけは私と同じ穴の貉(むじな)なのだ。

でも、ゴンたち3人は…きっと人を殺したことなんてない。

嘘をついていたことも、人を殺したことも。全てまとめて嫌われてしまうんじゃないかと思ってしまう。

2時間ほど経っただろうか。私の涙もとまり、わたしは隅で丸くなっていた。

キルも気を使ってか、私の方には来ずにクラピカと暗殺技のことについて話していた。

しかし会話も1時間ほど経つと自然となくなってしまった。

ゴンは釣竿とキルのスケボーとを交換して、クラピカは読書、レオリオは眠り、トンパはお茶を飲んでいた。

そして、時折なにか私に問いたそうなクラピカと目が合う。

それぞれが自由に行動し、さらに数時間が経過した頃それぞれが眠りについた。

私は寝れなかった。眠ったら、両親の夢を見る気がした。

ここ3ヶ月ほどは、毎日見ていた夢も見なくなったのに…。

寂しい寂しい寂しい寂しい

誰かの傍にいたい。でも私はいちゃいけないんだ

矛盾した想いが胸に押し寄せ、また涙が溢れた。

『…っ』

旅団のみんなに会いたい…

偽物じゃなくて。だけど…迷惑しかかけていない私の居場所はもうない。もう戻れない…

嗚咽を隠すように膝を抱えて蹲った。

ゴン達といようとも、心に穴が空いたように何かがこぼれ落ちてしまっている感じがする。

一緒にいるのは楽しいし、新鮮だけれどやっぱりどこか後ろめたい。

私なんかが一緒に、そう思わずにはいられなかった。

陰と陽、生きる世界が違うのだ。